ログインするとリマインドメールが使えるYO!


新着情報

INFORMATION

2023年1月25日(水)

《ぴあ×チャンネルNECO》強力コラボ 【やっぱりNECOが好き!】更新しました!

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第145弾!!
空間を巧みに使った、迫力のバトルシーンに驚嘆

新しいクリエイターの登場や国を挙げての人材育成によって、近年、良作がどんどん生み出されている中国アニメ。日本でもハイクオリティーな作品がU局やBS・CS放送などで続々と放送され、反響を呼んでいる。例えば、新海誠監督の熱心なファンとしても知られる李豪凌(リ・ハオリン)監督の作品。オムニバス映画「詩季織々」で総監督とともに3編目の「上海恋」の監督を務め、美麗な画面作りと繊細な心理描写が話題となった彼は、これに続き「時光代理人 -LINK CLICK-」を制作。写真と記憶を巡るヒューマニティーに満ちた物語を描き出し、日本を含む世界中で高評価を受けた。さらに人気BL小説を原作にした監督作「天官賜福」も国内で放送され、こちらは女性ファンを中心に注目を集めた。

今回紹介する「羅小黒戦記」(「ロシャオヘイセンキ」と読む)で原作・監督、そして彭可欣、風息神涙らと共に脚本を務めたMTJJ(木頭)も、今注目のクリエイターの一人だ。ほぼ個人制作で‘11年からWEBアニメシリーズ全28話が発表され、中国配信サイトにて2.3億回再生を記録。その勢いを受けて’19年に劇場版を制作し、こちらも興行収入約49億円の大ヒットとなった。日本ではまず字幕版が’19年に、そして吹替版が’20年に公開。声優には花澤香菜、宮野真守、櫻井孝宏など一線級の声優から、大塚芳忠、チョーらベテラン勢までが参加。おなじみの声優陣の声によって、キャラクターやストーリーがスッと頭に入ってくるのがありがたい。

この作品の核となるのは、深いテーマ性を含んだストーリー。物語の舞台となるのは、人間と妖精が共に生きる世界。とはいっても、妖精は人間がいない場所でひっそりと暮らしていたり、街中で人間に姿を変えて、正体を隠して暮らしたりしている。

主人公のシャオヘイは、静かな森で暮らしていた黒ネコの妖精。しかし、人間の開発の手によってすみかを失い、妖精のフーシー、人間のムゲンと出会うことになる。人間を憎むフーシーはシャオヘイを仲間に引き込もうとするが、ムゲンによってそれを阻まれ、シャオヘイはムゲンに捕まるような形で二人旅をすることに。この旅の中で妖精と人間についていろいろなことを学び、自らの生きる道を決めていくのだ。つまり、「種の共存は可能か」というのがこの作品の大テーマ。それぞれのキャラクターの心情は、複雑な世界情勢の中で生きる私たち現代人のそれにつながり、深く考えさせられる。

そんなシリアスなテーマを抱きつつも、キャラクターデザインはポップで愛嬌(あいきょう)満点だから、引き込まれやすい。シャオヘイが黒ネコになった姿は、大きくてつぶらな目が特徴的。人間の姿になると幼さの残る男の子になり、ネコ耳が残るのが、これまたかわいい。一方、ムゲンとフーシーはキリリとした現代風のイケメンキャラ。他にも中国古来のデザインを交え、魅力的な妖精たちが多数登場する。

そして本作最大の持ち味と言っていいのが、迫力のバトルシーンだ。とにかくキャラクターが動く動く! 例えばムゲンが初めてシャオヘイの前に現れる序盤では、人間ながら飛行術を身に付けている彼が、妖精たちを相手に縦横無尽のバトルを展開。カット割りやカメラアングルが巧みで、画面の奥行きを感じさせる三次元的な動きに思わず息をのむ。中国伝統の拳法のスピリットが入りこんでいるような熱いバトルは、この後、全編を通して繰り広げられることに。

エンターテインメントとしてのあらゆる魅力が詰まった本作。ぜひ、日本が誇る声優陣の演技とともに見てほしい。


鈴木隆詩(ライター)

ページの先頭へ


2023.1.10

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第144弾!!
多様化する“家族”のカタチを示す、同性カップルの日常系ドラマ

「おっさんずラブ」のヒットが追い風となって今注目されている、男性同士の恋愛を描く“BL(ボーイズラブ)ドラマ”。その多くが、キラキラした若いイケメンたちの出会いと恋愛成就までのドキドキのプロセスを見せて人気を得ている中、それとはまた違った魅力で多くのファンの心をつかみ、劇場版まで公開された話題作が「きのう何食べた?」だ。

よしながふみによる原作は青年漫画誌連載のコミックで、主人公カップルはどちらも成熟した魅力が漂う中年男性。多忙な弁護士だがプライベート優先で節約しながら毎日手料理を振る舞うシロさんと、それをおいしそうに食べる感情豊かな美容師ケンジ、すでに付き合いの長い2人の同居生活が毎日の食卓を通して描かれる物語は、いたって落ち着いていて、そこには心地よい時間が流れている。

これを演じるのはイイ感じに歳を重ねているイケオジ2人で、西島秀俊が真面目で堅実、意外と照れ屋なところがかわいいシロさんを、内野聖陽が人懐っこくて繊細、いざとなると頼もしいケンジを演じるというオツなキャスティング。西島はその後「ドライブ・マイ・カー」で国際的な評価を獲得し、新進気鋭の米制作スタジオA24が手掛けるApple Originalの新作ダークコメディー「Sunny(原題)」への出演が決まり、内野は本作で複数のアワードを受賞後、紫綬褒章を授与されたのも記憶に新しいところ。まさに2人にとってこのシリーズは、名優の域へと達する転機となった作品と言えるだろう。

ドラマは2人の日常生活にほのぼのしつつ、彼らが同性カップルであるがゆえに生じる生きづらさを乗り越えていく姿にほろりとさせられたが、それに続く劇場版でもコミカルな味にピリッと辛味を利かせたエピソードが展開。相手が挙動不審だと、別れ話よりも病気を疑ってしまう中年ならではの悲しき思考や、いつもは冷静なシロさんがケンジと若い同僚・田渕くん(SixTONESの松村北斗が快演!)の仲を誤解して焼きもちを焼くのには、くすっと笑ってしまう。一方で、シロさんがケンジを息子の伴侶として認めてくれたはずの母親(存在感抜群の梶芽衣子)の本音に戸惑い、傷つくケンジとの間で板挟みになる姿にはしんみりしたり、やきもきさせられたりする。

その中で、ケンジがシロさんに“2人だけで生きてるわけじゃない”と言うのにハッとさせられる。同性カップルが2人だけの恋愛世界ではなく“家族”として社会の中で生きていくとはどういうことか。その答えを探す彼らを通して多様化する“家族”のカタチを示すのが本作の変わらないテーマ。だからこそ、シロさんとケンジという“家族”がごく当たり前に社会の風景に溶け込む、そんなシーンがさりげなく描かれることに尊さを感じてしまうのだ。

もちろん、そうしたテーマにおいて目にもおいしい料理が重要な役割を果たしていることは言うまでもない。劇場版ではシロさんが作るぶり大根にネギみそを挟んだ厚揚げを添えるおうち和食、麺つゆとケチャップのソースを絡める母親直伝の肉団子を、ケンジが“我が家の味”として堪能し、シロさんが初挑戦するおせち料理が2人の絆を象徴するメニューとなるのにほっこりさせられる。

さらに、京都旅行に出かけたシロさんとケンジが老舗の鶏入りカレーうどんに舌鼓を打つ外食シーンや、セレブな友人・小日向さん(程よい色気の山本耕史)が持ち込んだお高い食材で、近所の仲良し主婦・富永さん(ほんわか明るい田中美佐子)がぜいたく料理を仕上げるシーンも劇場版のお楽しみ。彼女が作る高級牛のローストビーフとキンキのアクアパッツアはシロさんの節約メニューとは好対照。小日向さんが首ったけのワガママな年下恋人ジルベールこと航くん(磯村勇斗の当たり役!)も思わず箸が進み、料理が自然と人と人との関係を結んでいくことになる。

今回、映画・チャンネルNECOでは劇場版の初放送に合わせて、全12話のドラマ「きのう何食べた?」と正月特番ドラマの「きのう何食べた? 正月スペシャル2020」も一挙オンエア。愛すべきおじさんカップルに萌えるもよし、レシピのチェックをするもよし、普遍的なホームドラマとして楽しむもよし。最後にはほっと心が温まる爽やかな後味が待っている。


小酒真由子(ライター)

ページの先頭へ


2022.11.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第143弾!!
日本人の舌におもねらない、本場の味を堪能するニュータイプ・グルメドラマ

オリジナリティーの強い…というよりも、非常にクセの強いグルメドラマを世に放ち続けてきた映画・チャンネルNECOが、またまた変化球勝負を挑んできた。その名も「スパイめし〜異国グルメ潜入記〜」。舞台となるのは近年増えてきた外国人街。日本人の舌におもねらない本場の味に特化したニュータイプのグルメドラマだ。

タイトルの“スパイ”とは公安捜査官のこと。主演を務めるのは登坂淳一。そう、白髪がトレードマークの元NHKアナウンサーである。変化球どころか暴投気味の起用に見えるが、これが“ずっぱまり!”で驚かされた。登坂が演じるのは機密情報が入った赤い鞄を追って、さまざまな外国人街に潜入する木島誠司(通称・キマジ)。この役、通常のグルメドラマの主人公に比べて膨大なせりふ量を誇っている。なぜこんな場所に外国人コミュニティーが作られたのか? 彼らがどんな信仰や風習を持つのか? この料理の材料はなんなのか? これらほとんどをモノローグではなくせりふで消化しているからだ。

これは本作が孤食系ではなく、バディーモノだから。和田正人扮(ふん)する右も左も分からない新人の中条しのぶ(通称・ジョー)を相手に、木島が前述した情報をよどみなく説明するのだ。分かりやすく情報を伝えることは、登坂にとってのお家芸。このやりとりが芝居のメインとなるため、俳優経験の乏しい登坂でも、むしろ堂々たる主演ぶりを見せつけている。これぞキャスティングと演出の妙!

#1の舞台は埼玉県八潮市。ここには大勢のパキスタン人が暮らしており、ヤシオスタンという愛称で親しまれている。#2はフィリピン人が数多く在住し、リトルマニラと呼ばれる足立区の竹ノ塚。黒田達哉プロデューサーによると、日本人が経営する飲食店と違って外国人オーナー相手の撮影は非常にハードルが高く(そもそも日本語が通じないことも多い)、これまで製作してきたグルメ番組とは段違いに交渉時間がかかったという。

それもこれも日本人の舌におもねらない、本場の味にこだわったから。だからこそ捜査途中にキマジとジョーが訪れる店は“味”も“人”もガチンコのモノホン(俳優ではなく、実在店舗のスタッフが出演)。なじみのない料理が並ぶメニューから2人がどんな料理をチョイスし、舌鼓を打つのか、ぜひ番組を見てお確かめいただきたい。

気軽に海外旅行に出掛けられない昨今、日本にいながらにして国境を越えられる異国情緒グルメをドラマ仕立てで紹介してくれるのは大歓迎。見終わったら即座にGo Toしたくなること請け合いですよ!


奈良崎コロスケ(ライター)

ページの先頭へ


2022.10.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第142弾!!
家族として過ごす中で見せる、スターたちの魅力的な素顔

家族や親戚との結びつきが強いイメージのある韓国人。しかし、最近は西洋文化の影響や、核家族化が進んだことで、家族の絆が希薄になってきているとも言われている。そんな韓国で、改めて「家族のありがたみ」を感じさせてくれる番組がスタート。映画・チャンネルNECO初の韓流バラエティー番組となる「私たち家族になりました」は、宿舎生活や一人暮らしの長い芸能人たちが三つの家族に分かれ、それぞれ一つ屋根の下で生活する姿を定点カメラで観察するリアルバラエティーだ。

1組目は、アイドル第1世代グループgodのソン・ホヨン、第3世代のBTOBのリーダー・ウングァン、第4世代のTHE BOYZのヒョンジェの3人が叔父、ドラマ「椿の花咲く頃」で“国民の息子”と呼ばれ愛された子役のキム・ガンフンが甥となり、世代を超えた共同生活を送るガンフンファミリー。この家族のルールは、家事の担当はゲームで決めること。ボードゲームをしたり、PCゲームで遊んだり、ガンフンファミリーの毎日は、まるで正月の親戚の集まりのようににぎやか。ソン・ホヨンとウングァンが負けず嫌いを発揮して大人げなくガンフンに勝ち、世の中の厳しさを見せつける場面は爆笑必至! バラエティーセンス抜群なクセ強めなおじさんたちの共同生活に、元気がもらえる。

2組目は、Wonder Girls出身のユビンが姉、WayVのシャオジュン、ヤンヤン、ヘンドリーの3人が弟になって過ごす姉弟ファミリー。ユビンがイケメン3人を引き連れて古着屋へショッピングをしに行ったり、一緒に料理をしたり、仲良し姉弟っぷりを見せつける。ここの家族のルールは「寝起き直後に4人でセルフィー」。朝からイケメン3人とすっぴんセルフィーなんて……ああ、うらやまし過ぎる!

特に注目したいのは、3組目のSUPER JUNIORのイェソン&PRISTIN出身のイム・ナヨンの姉夫婦と、AB6IXのイ・デフィ&IZ*ONE出身のカン・へウォンによる妹夫婦の同居生活。日本でもリメークされた仮想結婚リアルバラエティー「私たち結婚しました」のフォーマットを継承したスタイルで、一つ屋根の下で新婚生活を見せる。最年長のイェソンは、新妻ナヨンにはもちろん、妹夫婦も合わせた家族全体をリード。ナヨンはそんな頼れる夫イェソンを立て、一歩引いて見守る。デフィ&ヘウォン夫婦は常に平等。ツーショット写真を撮ったり、おそろいのパジャマを準備したりと、これぞ20代の若者夫婦のリアルといったところ。夫婦の絆の行方も気になるが、対照的な2組が一つ屋根の下でうまく暮らしていくことができるのかも興味深いところ。

さまざまな家族の姿を見ながら感じたのは、誰かがそばにいることの安心感や楽しさ。なんだか“家族”に会いたくなる、そんなハートウォーミングな一作だ。


酒井美絵子(ライター)

ページの先頭へ


2022.9.26

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第141弾!!
狩猟グルメを堪能しつつ、莫大(ばくだい)な金塊の行方を追う!

舞台は明治後期の北海道。網走監獄から脱走した囚人たちの体に彫られた刺青に、一国を動かすほどの金塊のありかが隠されていた——。そんな奇想天外なミステリーをメインに、日露戦争の帰還兵とアイヌの少女の友情、大自然を生き抜くアイヌの知恵とワイルド過ぎるグルメ、猛獣たちとの壮絶なバトル、次々に現れては消える個性的すぎるキャラクター…と、面白さ全部乗せで人気を博す『ゴールデンカムイ』(野田サトル)。コミックスの累計は2300万部を突破。足掛け8年にわたった「週刊ヤングジャンプ」での連載は、惜しまれつつも今春幕を閉じた。

しかし、ほぼ同時に実写映画化決定のリリースが。すでにSNS上ではキャストの予想合戦が勃発しており、まだまだ盛り上がりは継続。果たして不死身の杉元は、アシ(リ)パさんは、誰が演じるのか? 今からワクワクが止まらない。そして10月からは待望のアニメシリーズ第四期がスタートする。第三期終了から約2年。ファンの渇望感は、とっくにメーターを振り切っている。あゝ、見たい! 一刻も早く見たい! チャンネルNECOではこれに合わせて、第一期から第三期までとOAD3作の一挙放送、さらに7日からはTV放送中の第四期も放送する。

なぜ『ゴールデンカムイ』はここまでの圧倒的な支持を受けるのか? それは「冒険/バトル」「歴史/ロマン」「狩猟/グルメ」をガツンとミックスした、サービス過剰の大盤振る舞い作品だから。金塊争奪戦に伴う北海道エリア全域を旅する冒険、新撰組・ミリタリー・アイヌを掘り下げる壮大な歴史ロマン、雄大な北の大地に生息するどう猛な獣たちとの死闘と野趣あふれる狩猟グルメ。これらの要素が組み合わさることで唯一無二のグルーブが生まれ、強い中毒性を醸すのだ。

どんどん深まってゆく杉元とアシ(リ)パとの関係も感動的だし、それぞれの思惑を胸に金塊を狙う屈強な男たちも色気が漏れ出ている。そんな彼らが追い求める刺青の囚人たちは、変幻自在に関節を外せる脱獄王の白石由竹を筆頭に、常人離れした怪力と性欲を持つ牛山辰馬、恍惚(こうこつ)の死を求めている連続殺人犯・辺見和雄、若い女性にしか見えない老齢の天才医師・家永カノなど、そろいもそろって個性的だ。

「生きること」「殺すこと」「食べること」の根源的な意味を真正面から突きつける衝撃作。前代未聞の超ド級エンタメを骨の髄まで堪能すべし!


奈良崎コロスケ(ライター)

ページの先頭へ


2022.8.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第140弾!!
自然界のルールから外れた動物と、独身を通した男性の関係

「本人も…努力してますから」。主人公・澤江弘一さんが取材カメラに向かって訴える言葉に、つい吹き出した。「本人も」って。澤江さんが「努力」を代弁しているのは、片翼が折れてしまい、繁殖地のシベリアに帰れない一羽のオオハクチョウ。

富山県には冬が迫ると、越冬のため多くのオオハクチョウ、コハクチョウが飛来する。澤江さんは、特によく知られる飛来地・田尻池でハクチョウの姿の美しさを観察して楽しむうち、翼の折れた一羽が心配になる。そのオオハクチョウは、春になって旅立つ群れに取り残され、一羽きりで池で生きることになった。澤江さんは放っておけず、毎日エサをやりに通い出す。そしてすっかり入れ込んで、「本人も努力してますから」と後見人的な発言をするまでになる。その人柄のおかしさ、手放しの優しさ。

映画・チャンネルNECOでTV初放送となる「私は白鳥」は、’21年に劇場公開されたドキュメンタリー映画だ。もともとは富山のテレビ局であるチューリップテレビが’19年に製作・放送した番組で、これが評判を呼び、追加取材の映像を加えて映画となった。四季が移り変わってゆく北陸地方を舞台にした、飛べなくなったオオハクチョウと、そっと見守る男性・澤江さんの物語として、まずはとても魅力的な作品だ。

澤江さんの、オオハクチョウの生態を尊重しながらの行動を通して物語が進むので、「私は白鳥」はおのずと、しっかりと自然に対する節度を持った映画になっている。ハクチョウは、オスとメスの違いが専門家でもすぐには分からない鳥ということもあり、翼の折れたオオハクチョウの性差は明らかにせず、名前を付けていない点もミソ。ムリに擬人化したり、キャラに寄せなくても、人と生きものの物語は紡げる、と立証できているあたりは、子どもの頃に児童向け訳で読んだ「シートン動物記」を思い出させる。ところが、だんだんとその物語はある重みを増していく。

前半はとにかく、“ハクチョウ大好きおじさんのあったか奮闘記”という感じで、楽しいのである。オオハクチョウが慣れない日本の夏を乗り切るために、澤江さんが心を砕く悪戦苦闘のエピソードが続いて、どうしたって応援したくなる。

実際、澤江さんのハクチョウへの理解と愛情はすごい。あの大ヒット作「キタキツネ物語」(’78)の企画者として知られる獣医師の竹田津実でさえ、自著「北国からの動物記 ハクチョウ」(’07)の中で、観察しているハクチョウを一羽ずつ見分けられるようになるまでかなり時間がかかった、と書いている。なのに「あれはおハナちゃん、あの子は…」とたちどころに分かる澤江さんののめり込みぶり。

僕は以前、東北の冬の池で思いっきりハクチョウに太ももをかまれた。それ以来、この鳥には好感を持っていなかったのだが、澤江さんを見ていると、なれなれしく近づいたこっちの方が悪かった、ごめんね…という気持ちになってくる。そうして澤江さんの人の善さ、熱心さがにじんでくるほど、ハッピーな展開が期待されるようになる。(自分が番組の構成作家業を長年してきたから言うが)TVには、作る人も見る人もどちらもせっかちになり、取材した素材が良い物語になるよう、やや急いで求めてしまうところがある。

次の冬が来て、仲間たちがまた池に戻り、オオハクチョウの翼が完治して仲間と一緒に旅立てる日が来たら。これは長期取材ものとしては最高のエンディングだ。そうなるのを一番期待していたのは、澤江さんだろうし。

しかし、そうはならない。冬になり、仲間が池に戻ってくるが、再会はぎこちない。中には、まるでよそものを威嚇(いかく)するような態度を示すものもいて、じっと見ていた澤江さんも涙声でつい「やめてやめて、いじめんといてよッ…」と声に出してしまう。その後も、自由に遠くまで飛べないオオハクチョウと仲間たちは打ち解けず、次の年の春にはまた一羽だけ残される。

オオハクチョウには翼が折れる前に結ばれていたパートナーがいて、そのパートナーはなんとか一緒に行きたい様子で最後まで傍にいる。ハクチョウは群れではなくペアが基本単位で、映画の中で澤江さんも言っているように、パートナーとの関係は一生続くそうだ。だから、パートナーにとっても、翼の折れたオオハクチョウと日本に残るか、群れと行動するかの選択はのっぴきならない。その上で…パートナーは群れと一緒に行くことを選ぶ。自分の意志で繁殖地に帰らないという決断は、渡り鳥には許されていないのだ。

ずいぶんとストーリーを細かく書き進めてしまっているが、いわゆるネタバレにはなっていないのでご安心ください。「私は白鳥」は、ここからが本番。期待されるハッピーエンドにはならなかったところから、本格的な物語が始まっていくのだ。

翼は完治せず、もう富山の池や川で生きるしかなくなったオオハクチョウは、いわば、自然界のルールから外れた存在である。いつ命が絶えてもおかしくない。澤江さんはそのおきてをよくわきまえながらも、目の前の命を捨て置けない。ハクチョウファンの楽しみの延長だったオオハクチョウへのエサやりが、ずっと続く務めになる。

前半の、自然に対する節度ある作りが、ここから効いてくる。ハクチョウはあくまで野生動物。人間を信用せず、弱っている時ほどひとりになろうとする。澤江さんがまくエサは食べるが、澤江さんになつくことは一切ない。はっきり言ってしまうと、翼の折れたオオハクチョウと澤江さんの間に、なんらかの心の通じ合い、絆が生まれることはないのだ。

以前、登場人物全員がそれぞれ片思いを連鎖させていく連続ドラマがあったが、「私は白鳥」も、群れとの行動を選ぶパートナー←翼の折れたオオハクチョウ←なついてくれなくてもエサをやり続ける澤江さん←澤江さんの帰りをいつもひとりで待つ飼いネコと、せつないぐらいに“片思い”の構図ができている。

パートナーとずっとは一緒にいられない運命になり、1年の大半を一羽きりで生きるオオハクチョウを「自分を見ているような気持ち」で世話する澤江さんは、それ自体には大きな張り合いを感じている。また冬が来てパートナーとしばしの再々会を果たせたオオハクチョウを見て、澤江さんは「良かった、良かった」と呟く。でも、その表情はどこか寂しく、まるで失恋したかのよう。

そうなると作り手はどうしても、澤江さんが独身なのを無視できなくなり、一歩踏み込まざるを得なくなる。それはよく分かるのだが、ずっと独りでいることについて作り手が澤江さんに水を向けた時、僕はそれこそ「やめてやめて、いじめんといてよッ…」と思ってしまった。

僕もいい年をして、独身だからだ。それはもう、いろんなことを言われてきた。どこか人間的な問題、欠陥があるんじゃないのか、と周りから思われているとしても、逃げようがない。人は結婚して子どもを産み育てて初めて一人前だ、と強く言い切られたら、黙ってしまう。でも澤江さんは、ちゃんと答える。もちろん寂しさも込みで、今を受け入れていることを話す。

澤江さんの元々はお気楽だったハクチョウ・ウォッチング(当初は確かに独身中年のヒマつぶしの要素はあったかもしれない)は、いつのまにか、自分の合わせ鏡のような孤独なオオハクチョウと向き合い続ける日々となった。疲労は澤江さんの中にたまっていくが、見捨てない。野鳥はいつまでたってもなついてくれないからやーめた、にはならないし、なれない。

自然界のルールから外れた生き物は、いつ死んでも仕方ないのか? 独身・独居の人間は、社会のルールから外れた厄介者なのか? 二つの問い掛けが絡まり合いながら、「私は白鳥」は、生きるとは何かを問うところまで歩を進めていくのである。

ナレーターは、天海祐希。映画のナレーションを務めるのは初めてだそうだ。祖父母が富山の人で、子どもの頃は夏休みを富山で過ごしていたという。全国区の人気があるスターが、出身地であるローカル局の番組に快く出演する話は割とよくあるので、そういうご縁つながりはスンナリ想像できる。

‘21年の秋、TBSの報道番組「news23」に天海さんが出演して、独身を通す生き方について語った回は大きな反響を呼んだ。僕もこの日たまたま見ていて「結婚し、出産するのが当たり前と考える生き方が自分には無理だと分かった」といった話を、ハキハキとする姿に強い印象を受けた。踏ん切りをつけてからは、仕事にこれまで以上に打ち込めるようになった、とも話していたと記憶する。

恐らく、そんな天海さんの生き方・選択が、「私は白鳥」の深い部分と強く響き合ったのだろう。ナレーションは淡々としている。しばらくは声の主が天海祐希だと気付かないぐらいに。オオハクチョウと澤江さんの関係を伝えるには、そうした方がいい、と確信を持って淡々としている。「私は白鳥」を初めて見る方には、ぜひそこも含めて味わってほしい。


若木康輔(ライター)

ページの先頭へ


2022.7.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第139弾!!
登場人物全員が怪しい…近頃はやりの考察系サスペンス、出発点の傑作

昨今、人気を博している考察系サスペンスドラマ。その先駆けと言えるのが、’16年制作の「砂の塔〜知りすぎた隣人」だ。都心のタワーマンションで繰り広げられるセレブ妻たちの確執、それぞれに秘密を抱えた登場人物…そんな中で起きた連続幼児誘拐事件の犯人は一体誰なのか?

脚本は、池田奈津子によるオリジナルストーリー。ダークサスペンスを得意とする彼女ならではのスリリングな展開が秀逸。その後、池田はゾンビサバイバルドラマ「君と世界が終わる日に」でも話題を呼んだ。

本作で描かれる、恐怖のタワマンコミュニティー。高層階と低層階、どちらに住んでいるかでヒエラルキーが決まり、ボスママの機嫌を損ねれば徹底的にいじめ抜かれる。タワマンの住人の皆さんって、そんな過酷な戦いの中で暮らしているのかと、タワマンとは絶対に縁がない人間としては邪推させられるほど赤裸々な描写が続く。

菅野美穂演じる主人公・亜紀は、ボスママから嫌がらせの集中砲火を受けて神経をすり減らしていく。ボスママめ、許さん! おいおいしっぺ返しを食らうんだろうなというフラグ立てまくりで、早く先が見たくなる。ボスママ役の横山めぐみが、視聴者の憎悪を一手に引き受ける本領発揮の演技を披露。もはや職人技と言えよう。

亜紀を何かと助けてくれるのは、上階に住む弓子。実は、とんでもない裏の顔を持っていて、ボスママより怖い存在だった! 得体の知れない氷の微笑を見せる松嶋菜々子、不気味で最高です。

正直キッツい話だけれど、癒やし枠もちゃんとあります。亜紀を初恋の人と慕う航平。亜紀に寄り添う年下の男を演じる岩田剛典の優しい笑顔に癒やされる…癒やされていいんだよね? 航平くん、信じてるから!

佐野勇斗と稲垣来泉が演じる亜紀の子ども2人は、お母さん思いでとっても良い子たち。今や人気俳優となった佐野の、まだあどけない表情にほっこり。稲垣の無垢(むく)な愛くるしさにキュン♡ まさか、あなたたちは裏切らないよね? でも、気になる動きをちらちらと見せられて、深読みしてしまう。ちなみに、佐野は’21年制作「真犯人フラグ」で事件のカギを握る青年を好演。本作では、その片りんがうかがえる。稲垣は、現在放送中の「オールドルーキー」で成長した姿を見せている。2人とも大きくなったね! おばさん、うれしいよ~。

そしてもちろん、何といっても菅野美穂。明るく人の良い主婦という表の顔に隠された複雑な心情を演じる彼女の演技に引き込まれ、視聴者も混乱の渦に巻き込まれていく。菅野にとっては、このドラマが出産後初主演作。実生活で母となって間もない時期に、子どもが脅かされる女性の役に挑むところに演技者としてのすごみも感じる。

主題歌は、THE YELLOW MONKEYがドラマのために書き下ろした「砂の塔」。謎が深まるラストに流れるとゾクゾクしてくる、ドラマティックで魅惑的なロックだ。

誰もが怪しい疑心暗鬼に満ちた物語を手掛けたのは、演出の塚原あゆ子。’21年制作の「最愛」でもその手腕は高い評価を受けた俊英だ。現在のドラマ界のトレンドを導いた傑作。SNSで話題になっていたのを知りつつ未見の方もいることだろう。この機会に、どっぷりハマっていただきたい。


伊沢晶子(ライター)

ページの先頭へ


2022.6.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第138弾!!
人間と家族の暗黒面をえぐり出す! 中島哲也監督の“バケモノ”級ホラー

日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を映画化した本作は、邪悪な“何か”に取りつかれた人々の壮絶な運命を描くホラー映画だ。しかし、見るからにおぞましいモンスターや悪霊が攻撃を仕掛けてくる典型的なホラーとは、明らかに恐怖の質もベクトルも異なっている。そのキーワードは、“姿なき脅威”と“心の闇”だ。

これが本格的なホラー初挑戦となった中島哲也監督は、恐怖の根源となる“何か”の姿形を直接映さず、見る者が持つ怖いもの見たさの想像力をかき立てながら、ごく平凡な日常の中に起こった不条理な怪異がエスカレートしていくさまを映像化。その一方で、外見からはうかがい知れない登場人物たちのゆがんだ内面に切り込み、人間という生き物の弱さや愚かさを容赦なくえぐり出していく。とりわけ理想の家族を築くことを夢見て、完璧なイクメンぶりをアピールする主人公、田原(妻夫木聡)の意外な二面性が、じわじわと暴かれていくストーリー展開が恐ろしい。これまでも「告白」などで人間の悪意、憎悪といったネガティブな側面を追求してきた中島監督の志向が、ホラー・ジャンルでも遺憾なく発揮され、見る者を“心の闇”という得体の知れない恐怖の深淵へと誘っていく。

前述した妻夫木のみならず、豪華キャストがセルフイメージを覆す異色の役どころに挑んでいる点も見逃せない。ニヒルなオカルトライター役に岡田准一、育児ノイローゼに苦しむ田原の妻役に黒木華、さらに日本最強の霊媒師とその妹であるキャバクラ嬢役に松たか子と小松菜奈。三つの章で成り立つ本作は、チャプターごとに物語の視点ががらっと変わり、それぞれのキャラクターの見え方も変化していくユニークな構造になっている。

そして、ビジュアル面においても中島ワールドが全開だ。突如さく裂するショッキングな猟奇描写、悪夢のようなサブリミナル的イメージが見る者を戦慄させてやまない映像世界は、ひたひたと迫り来る強大な“何か”との最終決戦へと突き進んでいく。とある団地に日本全国から大勢の霊媒師らが集結するそのクライマックスでは、映画史上かつてない壮大なスケールの“おはらい”の儀式が繰り広げられるのだ!

人間や家族のダークサイドに迫ったテーマ、おどろおどろしくもスタイリッシュな映像感覚。その両面でホラーの既成概念を突き破った本作は、見る者の視聴覚を刺激するだけでなく、暗黒の恐怖が心までも侵食してくる。まさしく映画そのものが“バケモノ”級の衝撃作と言えるだろう。


高橋諭治(ライター)

ページの先頭へ


バックナンバー





ご注意

お使いのAndroid標準ブラウザではこのサイトを閲覧することができません。
以下の推奨ブラウザをお使いください。