ログインするとリマインドメールが使えるYO!


新着情報

INFORMATION

2019年3月25日(月)

《ぴあ×チャンネルNECO》強力コラボ 【やっぱりNECOが好き!】 第90弾~第99弾

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第99弾!!
“普通の物差し”をやわらかくほぐしてくれる市井の人々の物語

有名人や時の人ではなく、市井の人々の長期取材を主軸のカラーにして長く続いているドキュメンタリー番組がある。そう、フジテレビの「ザ・ノンフィクション」だ。’95年にスタートして以来、主人公となる人が葛藤や悩みを抱えながら暮らし、人生の転機を乗り越えていくさまを毎回のように描いて、根強い支持を集めている。

主人公となる人物は、視聴者の興味を引く個性の強いパーソナリティーの持ち主だったり、異色の環境に置かれていたりする場合が多いのだが、そこはあくまで入り口。密着取材のカメラを通して彼らの生活を見ているうち、問題にぶつかって悩む時の心細さ、そばにいてくれる人から感じる温かさは自分と同じなのだな……と視聴者には近しく感じられ、だからこそ、苦しみながらも立ち向かっていく姿に勇気づけられる。

実はこの番組スタイルは、制作者が確信を持って固めたものだ。社会的なテーマを取材・撮影する中で関係者を撮っていくのとは逆に、名もなき人々が日常の困難に悪戦苦闘する姿を通して社会のありようを浮かび上がらせていく狙い。あくまで人間中心を信念にしているのだ。視聴者は、まるで友人を見守るような気持ちで主人公たちの奮闘を見ているうち、いやでも彼らが直面する問題(社会的な矛盾や偏見など)について考えてしまう。でもそれは共感から始まる疑問だから、大きな問いかけを受け身で聞くよりも血の通った考えになる。そこが「ザ・ノンフィクション」の魅力であり、長く放送が続く理由だ。

それだけ人の心を動かす物語を携えた人物を取材するのだから、当然、番組となって放送された後の人生にもドラマが待ち受けている。「ザ・ノンフィクション」は反響が大きければ取材を続けるのも大きな特長にしていて、後日譚と組み合わせた「特別編」を新たに放送している。その意味では今回の「特別編」6本集中放送は、「ザ・ノンフィクション」のエッセンスを知るのには格好の機会だろう。

ここまで書いてきた「ザ・ノンフィクション」の魅力、個性の典型と言えるのが「マキさんの老後 ~波乱万丈!10年の軌跡~」(’17)。ゲイのマキさんとレズビアンのジョンさん夫婦の、二人三脚の日々を追ってきたシリーズの総集編だ。ゲイとレズビアンの夫婦生活…まずはどうしたって、普通じゃないイメージを抱いてしまうものだが。夕食のたびに起きる、我が強くて互いに譲らない2人のけんかのようすは、夫婦げんかの普遍像そのもの。

「私は楽しい報告をしたいだけなのに、話の腰を折らないで!」
「折ってません」
「いいえ折りました」
「こっちは疲れてるのにごちそう作ったんだから。しゃべってばかりいないで食べてよッ」
「あーほら、そうやって私に仕事が見つからないのを遠回しに責めるのね!」

こんな調子。よくまあ、こんなところから火が付くなあとあきれるバトルの発端から、あっさり仲直りするまでの一部始終を、カメラが毎回ちゃんと撮っているのがまたおかしい。けんかするほど仲がいい、を地で行くマキさんとジョンさんの暮らしは「ザ・ノンフィクション」の人気シリーズとなっていて、この「特別編」の後も取材と地上波放送が続いているほどだ。

実は2人はもともと、話し合いで結婚した恋愛感情抜きの関係。ずっと水商売の世界で華やかに生きてきたものの、老いてからの孤独を想像するとたまらなくなり、不安を共有するかたちで一緒に暮らし始めた。しかし、寂しさをシェアし合うことはイコール、お互いの脆い部分を、覚悟を決めて受け止めることになる。マキさんとジョンさんの支え合いがだんだん濃密になり、どこのご夫婦よりもご夫婦らしくなっていく過程には、どんな人でも共通の喜怒哀楽が詰まっている。イヌも食わない、と昔から言われてきた夫婦げんかの様子が、遠慮のない愛情のかたちとして伝えられ、こうした日々の営みの集積が世界を作るのだと、多くの人の心に温かく認識されていく――。

少し大げさに言ってしまうと、これはドキュメンタリーが人類にもたらした革命的な変化なのだ。それまでは、世の中とは偉人や立派な人物によって作られるものと思われていた。19世紀末に発明された映画によって、偉人伝や立志伝のような書物の主役にはならない普通の人の価値を、“普通の人”自身が発見した。そして今、“普通”の定義は広がり、一体何をもって“普通”と呼ぶのかと問い返す姿勢は社会全体に深まってきた。「ザ・ノンフィクション」はその変化に、常に敏感に応えてきた番組なのだ。マキさんとジョンさん夫婦に限らず、LGBTの人が主人公になる回は過去にも多かった。また、今回の特集放送でも、山で自給自足の生活を送る家族、美容整形で生まれ変わろうとする女性……とさまざまな人たちが登場する。

彼らがそれぞれの居場所で精一杯生きている姿を通して、家族、老い、仕事と生きがい……さまざまなテーマに触れていき、僕たちの中にある“普通の物差し”をやわらかくほぐしてくれる役目を、「ザ・ノンフィクション」は担っている。


若木康輔(ライター)

ページの先頭へ


2019.2.25

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第98弾!!
野球ファンなら「ニヤリ」のリアリティあるプレーシーン!

1915年、全国中等学校優勝野球大会としてスタート、昨年第100回の記念大会を迎えた全国高等学校野球選手権大会。1世紀を超えるその歴史の中で、“台湾代表”として決勝に進出したチームがあった。そのチーム、嘉義農林学校(嘉農=KANO)野球部の軌跡を描いた「KANO~1931海の向こうの甲子園~」は、野球ファンのマニア心をくすぐる作品だ。

舞台は日本統治下の台湾。弱小チーム嘉義農林野球部の監督に、かつて名門・松山商業を甲子園に導いた近藤兵太郎が就任する。近藤は選手たちを猛練習で鍛え上げ、連敗続きだった嘉農野球部は’31年、ついに夢だった甲子園の土を踏む──。

特筆すべきは、野球映画としてのクオリティの高さ。野球を扱った映画はとかく、野球ファンからするとプレーシーンに不満が残るものだが、「KANO~」は台湾全土の高校、大学を回り、5年以上の野球経験者を選手役に起用したそうで (主将でエースの呉明捷を演じたツァオ・ヨウニンは、21歳以下のW杯で外野手としてベストナインに選ばれている)、そのリアルさは圧倒的。ユニフォームなど当時の用具や甲子園球場も忠実に再現されており、特に甲子園は実際にセットを組み、独特の黒土は粉砕した古タイヤを混ぜて表現したというだけに、野球ファンも納得の出来映えだ。

加えて、永瀬正敏演じる近藤の先進性も、野球ファンには見逃せないところ。嘉農以前にも台北一中や台北商業が台湾代表として甲子園に出場したが、どちらも選手は日本人のみだった。ところが近藤は、打撃に秀でた中国大陸から移住した漢人、足が速い台湾原住民、そして守備に長けた日本人それぞれの特徴を活かした混成チームを編成する。“適材適所”は今なら当たり前のことだが、あの時代に、しかも日本統治下の台湾で、民族の垣根を超えてそういうチームを作り上げるという考え方が、どれだけ革新的だったかは想像に難くない。

また、決勝で対戦した中京商業の伝説的名投手、吉田正男を攻略するにあたり、近藤は吉田投手のフォームのクセによって球種を見抜くのだが、これも時代を考えれば驚嘆に値する。このように、この作品には野球ファンなら思わず「ニヤリ」としてしまうようなシーンが随所に散りばめられているのだ。

なお、“麒麟児”と呼ばれた呉明捷はその後早大に進学し、通算7本塁打をマークしたこと(長嶋茂雄が更新するまで東京六大学の最多タイ記録だった)、嘉農に憧れる少年として登場する呉波(呉昌征)は嘉農を経て巨人に入団、2年連続首位打者を獲得するなど、“人間機関車”の異名を取り、殿堂入りを果たしたこと、さらには中日で活躍した郭源治が野球の手ほどきを受けたのが嘉農出身者だったことも抑えておくと、さらに映画がグッとくるものになるはずだ。


藤田健児(ライター)

ページの先頭へ


2019.1.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第97弾!!
希代の名バイプレイヤーが映画に残した魂

不謹慎ながら漣さんらしい最期だった。

撮影現場を誰よりも愛し、自ら“現場者”と称していた俳優・大杉漣さんが、’18年2月21日に亡くなった。享年66。テレビ東京系ドラマ「バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~」の撮影中に倒れ、遠藤憲一、田口トモロヲ、松重豊、光石研という大好きな俳優仲間に見守られながらの旅立ちだったという。

筆者が初めて漣さんを取材したのは’01年のこと。週刊朝日で、「日本映画界を担う個性派男優五人衆」と題して漣さん、田口、遠藤、光石、そして寺島進の5人を集めてグラビアで特集記事を組んだのだ。当時は邦画斜陽の時代。誰が見るとも分からぬ低予算の作品の片隅で、とにかく出まくって異彩を放っているおじさんたち……もとい、バイプレイヤーの彼らに光を当てて、映画界を盛り上げたい気持ちで企画を組んだ。多忙な彼らに一堂に会してもらうためにスケジュールを調整するのは至難の業だったが、「漣さんが参加するのなら」とほかの4人も喜んで参加してくれた。その1年後の’02年には、5人に松重を加えた特集上映企画「6人の男たちフィルムズ」が東京・下北沢の映画館で開催され、それが’17年に放送されたシリーズの第1弾「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」へとつながった。その間、各自共演はしていても、全員が顔をそろえることは滅多になかったと思うが、互いの仕事ぶりに刺激を受けつつ、同志としてつながっていたのだろう。彼らの存在なしに近年の日本映画は語れない。

けん引役はもちろん長兄の漣さんだ。演出家・劇作家の太田省吾主宰の転形劇場に入団し無言劇「沈黙劇」に打ち込むも、それだけでは生活していけずピンク映画「緊縛いけにえ」(’80)など多数のピンク映画に出演するようになる。普通、ちょっと名が知られてくると過去を抹消する俳優も多いが、基本的に来る仕事は拒まなかったと言われる漣さんはそんな野暮なことはしない。「発狂する唇」(’99)でレオタード姿になるのなんて朝飯前。「愛の新世界」(’94)ではSMクラブで女王様のアルバイトをしている鈴木砂羽が放つムチにもん絶しつつ恍惚(こうこつ)の表情を浮かべ、「刑務所の中」(’02)では入浴時、局部にティッシュがついていたことから“ティッシュマン”のあだ名をつけられてしまった受刑者を喜々として演じていた。一般的には「HANA-BI」(’97)をはじめとする北野武監督作品でのヤクザのイメージが強いが、人間くさくちょっと情けない役が絶妙にうまかった。その見た目と中身のギャップを巧みに役に反映させたのが「劇場版 ネコナデ」(’08)だ。堅物のサラリーマン鬼塚太郎が、成り行き上飼うことになった猫との出会いで人生が変わる。剛柔併せ持った大杉漣という俳優の魅力がギュと詰まった作品となった。

そして、漣さんのもう一つの魅力が、年齢を重ねて一層増していった艶だ。これだけ映像の中で結構な痴態を晒(さら)していても見る者に不快な思いをさせないのは、好きなサッカーにいそしみつつ保ち続けていたスレンダーな肉体と、生き方にも表れていた品のよさから来るのだろう。漣さんの商業初主演映画は原作者でSM小説の巨匠・団鬼六がモデルと言われる「不貞の季節」(’00)だったワケだが、それから16年も経った’16年に「蜜のあわれ」で同様に作家・室生犀星の官能の世界を演じてしまうとは! 漣さんと共演の二階堂ふみの年齢差は、なんと43歳。老作家と金魚の姿を持つ少女のちょっとエロティックな関係を成立させてしまえるのは漣さんぐらいだろう。そして劇中、少女に翻弄(ほんろう)される老作家の姿も愛らしい。

この日本での漣さんの偉才は海外にも知られており、’15年には韓国映画「隻眼の虎」に出演した。主演が「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシクであることから快諾したという。何より亡くなる直前に収録に参加した日本テレビ系「アナザースカイ」で自身が語っていたが、漣さんにとって韓国は転形劇場時代に公演を行った思い出の国。役柄的には定型的な威圧感ある日本軍将校ではあるが、漣さんは韓国映画のためになるならと出演したのだろう。

例え小さな役でも、お世話になった人のため、作品のためにと全力投球した漣さん。漣さんが残してくれた作品を見れば一目瞭然。その魂は作品の中に確実に宿っている。


中山治美(ライター)

ページの先頭へ


2018.12.25

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第96弾!!
天才が執念でつかんだ“俳優ビートたけし”の称号

映画監督・北野武。
今や海外の人に「知ってる日本人は?」と尋ねると、黒澤明監督、宮崎駿監督と並んで必ず上位に挙がる名前だ。監督2作目の「3-4x10月」(’90)が、作家性ある監督たちをフィーチャーするイタリア・トリノ国際映画祭に選出されたのを皮切りに、7作目の「HANA-BI」(’97)では、世界三大映画祭の一つであるベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞を受賞。以降は国際映画祭の常連で、世界の巨匠が参加したカンヌ国際映画祭60周年記念短編映画プロジェクトに日本から唯一選ばれただけでなく、「Dolls ドールズ」(’02)に至ってはロシアで約2年間の超ロングラン興行を記録している。

その監督業に対して、意外に語られていないのが俳優ビートたけしとしての評価。キアヌ・リーヴス主演「JM」(’95)やスカーレット・ヨハンソン主演「ゴースト・イン・ザ・シェル」(’17)とハリウッドからもオファーが届く逸材なのに、国内映画祭での受賞は、「HANA-BI」でスポーツ紙記者が選ぶブルーリボン賞、「血と骨」(’04)で「2004年度キネマ旬報ベストテン」の主演男優賞を受賞したくらい。自身が審査委員長を務める東京スポーツ映画大賞では毎回、オレ作品が受賞の嵐だが、もっとたたえられてもいいのでは。高倉健と共演した「夜叉」(’85)の薬物中毒のヤクザもんで見せた狂気、「バトル・ロワイアル」(’00)の殺戮(りく)合戦を仕切る教師役で発揮されたカリスマ性、「座頭市」(’03)の本家・勝新太郎にも負けず劣らずの殺陣シーンの美しさetc…。印象的な作品を挙げたらきりがない。

俳優ビートたけしの誕生は、お笑いブーム全盛期の80年代にさかのぼる。バラエティ番組「オレたちひょうきん族」で育った世代は、その流れを汲んだはちゃめちゃな刑事ドラマ「刑事ヨロシク」(’82)で弾けるたけしを楽しんでいたわけだが、役者として開眼したのは大島渚監督「戦場のメリークリスマス」(’83)だろう。日本統治下のジャワ島の捕虜収容所を舞台に、たけしは捕虜の英国陸軍中尉(デヴィッド・ボウイ)と奇妙な友情を育むハラ軍曹を演じた。しかし何か事件が起こった時に、一瞬にして高圧的かつ凶暴な態度をとるハラ軍曹は、戦時下の緊張ある当時の状況と人間の恐ろしさを表していた。

と、今見れば、毒舌が売りだったたけしが持っている危うさを、巧みにキャラクターに生かした大島監督の采配はさすが!とうなるが、当時は「コマネチ!」を披露しているお笑い芸人のイメージの方が強烈だった。たけしの著書「テレビじゃ言えない」(小学館新書)でも語られているが、同作はカンヌ国際映画祭コンペティション部門にも選出された自信作であるにもかかわらず、ある日、上映館をのぞいてみたところ、自身の出演シーンで客席から笑いが起こったことにショックを受けたという。おそらく自分が笑われたということよりも、演技に関しては素人同然だった自分を起用してくれた大島監督に対して申し訳ないという気持ちの方が強かったのではないだろうか。

以降、意識的に実際に起こった事件をドラマ化した作品で、世間から“悪”と称された人物に挑み続けていくことになる。8人の女性が犠牲になった「昭和四十六年 大久保清の犯罪」(’83)。信仰上の理由から交通事故にあった息子の輸血を拒否し、それがゆえに息子を死亡させてしまった“輸血拒否事件”を描いた「説得」(’93)。家出をした女性たちを新興宗教施設で住まわせていた千石イエスによる事件「イエスの方舟」(’85)。さらに在日韓国二世の金嬉老が起こした監禁籠城事件「金の戦争」(’91)もある。どの作品も、事件の真相を丁寧にひもときつつ築き上げた脚本の力もあるが、たけしが演じることによって単なる悪ではなく、人間のもろさや弱さもにじみ出てきて、見る者の心の奥底にも同様の感情が眠っているのではないか? と突きつけてくる説得力があった。何より、今も同様の事件は繰り返し起こっており、事件を検証する意味でも今も見るべき重要な作品となっている。

これら強烈な役の印象もあって、もはや映画やドラマでシリアスな演技を見せるビートたけしを笑うものは誰もいないだろう。それどころか数々の作品で放ってきた殺気や狂気はすごみとなって蓄積され、自身が主演した監督作にも生かされている。さらに、たけしが出てくるだけでなにか起こるのではないか? という期待と不安が入り混じり、見るものをぐっと作品に没入させてしまう力がある。テレビ東京開局記念日ドラマ特別企画と題して放送された「破獄」(’17)もその一つ。吉村昭の同名小説を原作に、山田孝之演じる無期懲役囚の脱獄犯と、彼をかつて担当した“小菅刑務所”の看守部長・浦田(たけし)の心理戦を描いた。日本映画界をけん引するたけしと山田の“競演”はもちろん、脚本が「イエスの方舟」を手掛けた池端俊策というのもニクい組み合わせじゃないか。

ただ最近は俳優業より小説家の方で活躍の様子。38歳で千石イエスを演じたたけしが、70歳を過ぎて俳優としてどんな役に挑み、どんな味を醸し出していくのか。今の俳優ビートたけしがもっと見たいのだ。


中山治美(ライター)

ページの先頭へ


2018.11.26

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第95弾!!
全“王国の民”必見のエピソードが、ここに!

バーフバリ!  バーフバリ!
これ、どんなに落ち込んでいるときでも、声に出すだけで瞬時にテンションMAXにブチ上がる呪文です。お試しください。

てなわけで、昨年から今年にかけて世界中でモリモリに盛り上がったインド映画「バーフバリ 伝説誕生」~「バーフバリ 王の凱旋」。古代インドの架空の王国マヒシュマティを舞台にして、伝説の王子バーフバリと暴君バラーラデーヴァという義兄弟が繰り広げる王位継承争いをベースに、ド迫力のアクション、ドSなヒロイン、ドカラフルな画作り、そしてギャグあり歌あり踊りありというドエンタメで大旋風を巻き起こしたメガヒット作品だ。興行収入の累計は400億円を突破し、インド映画の歴代記録を更新。なにもかもが規格外である。

その勢いは日本にも飛び火した。普段はインド映画をスルーしている層も口コミで劇場へ続々と足を運び、その新鮮な映画体験をSNSで拡散。さらには「絶叫上映(声を出すことが許された上映)」にコスプレで臨む重度のバーフバリ感染者たちが、劇中の民衆と一緒になって「バーフバリ!」と叫びながら拳を突き上げるさまも繰り返しメディアで伝えられ、社会現象と化した。

そんな熱狂も冷めやらぬ中、2部作の前日譚を描くアニメシリーズ「バーフバリ 失われた伝説」が登場。幼少時から続くバーフバリとバラーラデーヴァの因縁はもちろん、物語のキーマンである腹心カッタッパの若き日の英雄譚(髪の毛がある!!)、蛮族の長カーラケーヤの悲惨な過去などもつづられる。

注目してほしいのはバーフバリの初恋エピソード。隣国ラドラグニーの美しき王妹ヤマグニとのラブい展開が待ち受ける。おいおい、デーヴァセーナと出会うほんの少し前に、こんなフォーリンラブがあったんかい! もちろん、この恋は一筋縄ではいかないことは決定しているのだけど(上手くいっていたらデーヴァセーナの出番はないですから)。

気になる作画面は思った以上にハイレベル。日本のアニメと比べたら動きの面や構図面で「アレレ?」と思う部分もあるけれど、キャラデザはキャスト陣をしっかり捉えていて無問題だし、多少のぎこちなさもむしろ“味”に転化。あの印象的な劇伴も移植されているし、小山力也、山野井仁ら日本語吹き替えの声優陣も劇場版からそのまま引き継がれているので、感情移入はスムーズだ。主要キャラのバックボーンを深く理解することで世界観が補完され、2部作のリピートがさらに楽しくなること請け合い。映画版未見の人の予習教材としても最適だ。マヒシュマティ王国の民を自称するなら絶対に見るべし!


奈良崎コロスケ(ライター)

ページの先頭へ


2018.10.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第94弾!!
アイドル映画としても楽しめる、大林監督版BJ!

’18年は手塚治虫の生誕90周年に加えて、「ブラック・ジャック」が「週刊少年チャンピオン」にて連載を開始してから45周年というアニバーサリーイヤーである。無免許の天才医師の活躍を描いた「ブラック・ジャック」は、医療漫画のパイオニア的作品であり、後期手塚最大のヒット作。当然ながら映像化もさかんに行われてきたが、その記念すべき第1作となったのが、大林宣彦監督が手掛けた’77年公開の実写映画「瞳の中の訪問者」だ。

ベースになっているのは「春一番」という20ページの読み切り。これを大林流の味付けでふくらませている。ブラック・ジャックに抜てきされたのは宍戸錠。ほっぺたの存在感はそのままに強烈な印象を残してくれるが、あくまで本作の主役は片平なぎさが演じる華麗な少女・千晶。片平なぎさは公開当時まだ18歳で、クラクラするほどの美少女ぶりを見せつけてくれる。また千晶の友人・京子を演じた志穂美悦子も、山本彩(NMB48)ばりのアイドルフェイスでめちゃくちゃキュートだ。

そんなWヒロインのサービスシーンがたっぷり盛り込まれているあたり、さすがは若手女優を美しく撮ることにかけては右に出る者のいない大林監督。わかってらっしゃる! なにせ2人がテニス部という設定からして原作にはないオリジナル。片平×志穂美ペアのテニスウエア姿は、現在でもアイドルとして堂々と通じる健康的なセクシーさに満ちている。

一方、映画全体を覆うムードは、同年に公開された大林監督の商業映画デビュー作「HOUSE ハウス」で成功した美少女ホラーテイストを継承。本作では、月丘夢路、長門裕之、檀ふみ、千葉真一、ゴダイゴといった時の大スターが次々にチョイ役で出てくるのも目に楽しい。

ストーリーはシンプルなミステリーだが、千晶の目に映る謎の男を峰岸徹が怪演し、画面をキリリとシメてくれる(峰岸は’82年の大林作品「ねらわれた学園」でも星の魔王子を怪演しております)。

アンニュイすぎるピノコや重要なシーンで突然ヒョウタンツギが出現するなど、手塚ファンがニヤリとする箇所も多数。徹底したエンタメで最後まで楽しませてくれるサービス精神旺盛な映画だ。食わず嫌いをしていたらもったいない!

さて、この「瞳の中の訪問者」を含め、これまで「ブラック・ジャック」の実写版は計5作品発表されている。’81年には加山雄三主演のTVドラマシリーズ、’96年には隆大介主演のOVシリーズ、’00年には本木雅弘主演の単発ドラマ版3作、’11年には岡田将生主演でエピソードゼロ的な単発ドラマが制作された(このうち、11月の映画・チャンネルNECOでは、「瞳の中の訪問者」を初のHDリマスター版で放送するほか、本木雅弘主演の単発ドラマ版3作をラインナップ)。

一方、アニメの「ブラック・ジャック」も出﨑統が監督した’93年スタートのOVA版を筆頭にクオリティの高いシリーズがズラリ(同チャンネルでは出﨑統監督版10作品のほか、桑原智監督版、西田正義監督版のOVA全12作品や、「劇場版 ブラック・ジャック」を放送)。“イリーガルな手術を高額報酬で請け負う異様な風体の闇医者”という強固なキャラクターがドンと鎮座しているので、オリジナルストーリーを展開しやすい反面、演出者の手腕が試される作品、それが「ブラック・ジャック」なのだ。


奈良崎コロスケ(ライター)

ページの先頭へ


2018.09.25

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第93弾!!
山田孝之35歳の誕生日に、あの伝説の番組が再び!

誕生日に、CSで特集が組まれる俳優がいるだろうか?

10月20日に35歳を迎える俳優・山田孝之。型破りな山田に対抗すべく(?)、映画・チャンネルNECOも35時間ぶっ通しで「山田孝之35」と題して出演作を放送する手厚い祝福ぶりだ。ラインナップがこれまたすごい。九州男児の凛々しさと抜群の運動神経を世界に轟かせた時代劇「十三人の刺客」(’10)から、原作漫画ファンもナットクの強面の金融会社社長姿が板に付いていた「闇金ウシジマくん」シリーズ、そして劇場ではなぜか3Dを用いて山田を深掘りした「映画 山田孝之」(’17)まで。この機会に山田孝之という俳優を解体しようものなら、ますます困惑するに違いない。

中でも特筆するべきは’17年10月6日深夜に、テレビ東京系で緊急生放送して世間をざわつかせた「緊急生放送! 山田孝之の元気を送るテレビ」だ。山田の周辺で数々の不思議な現象が起こっていることを聞きつけたタレント・いとうせいこうが旗振り役となり、生放送で山田が視聴者に向かって元気を送るという実験を行った前代未聞の番組だ。

当初は「山田孝之の演技入門」を放送する予定だったことから、スタジオでは映画「CASSHERN」の紀里谷和明監督、小池栄子、松岡茉優がスタンバイ。するとどうだ! Twitterなどで続々と「10年間止まっていた時計が反時計回りをし始めた」とか、「ネコがワンと吠えた」とか、「不眠で悩んでいた夫が眠った」などの奇跡情報が寄せられたのだ。山田孝之、恐るべし。

番組の仕掛け人は、「山田孝之の東京都北区赤羽」「山田孝之のカンヌ映画祭」、そして「映画 山田孝之」でスクラムを組んできた山下敦弘&松江哲明監督。リアルか? フェイクか?のギリギリの線を狙った演出で、キャスティングから企画までとかく予定調和になりがちな番組作りにNOを突きつけてきた。それは間違いなく、視聴者離れとコンプライアンス問題で萎縮しがちだったTV業界に刺激を与える試みだった。

その中心にいるのが、山田だ。

16歳で俳優デビューした当初は、その美少年ぶりを生かしてドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」や「白夜行」、映画「電車男」と胸キュン青春もので活躍していた。転機となったのは、三池崇史監督のヤンキー・アクション映画「クローズZERO」シリーズ。小栗旬、桐谷健太、綾野剛、上地雄輔ら注目の若手俳優が、舞台裏でも劇中さながらの火花散る“競演”が予想される中、山田は誰よりも肉体を鍛え上げてきたという逸話が残っている。山田は他の俳優よりも小柄であることから、「百獣の王」の異名を持つ芹沢多摩雄役を演じるにあたって説得力を持たせるために、見た目から変貌を遂げてきたという。その気迫とアクションシーンでの破壊力は群像劇の中でも際立ち、女性はもちろん男性たちが「山田孝之、すげー」と平伏した。

以降、自己プロデュース能力が覚醒。映画「その夜の侍」(’12)でひき逃げ事件の犯人を演じた次に、映画「凶悪」(’13)では真逆の、凶悪事件の加害者の心理に迫っていく雑誌記者役を選んだ。デビュー15年目にして挑んだ初舞台も、どうせやるなら皆を驚かせたいと、失業中の元工場労働者たちが男性ストリップ・ショーで一攫千金を狙う「フル・モンティ」(’14)に挑み、劇場に詰めかけた観客に“笑撃”を与えた。

ほか、コスプレ姿も愛らしい「勇者ヨシヒコ」シリーズに、とぼけた味わいの「ジョージア」のCM、ファンを公言していた水曜日のカンパネラのMV「小野妹子」でまさかの小野妹子役で登場するなど、俳優・山田孝之という器を使って創造の世界で自由に羽ばたき、ファンを良い意味で裏切り続けることに喜びを感じているようだ。

そして、’19年1月26日(土)公開の映画「デイアンドナイト」でついにプロデューサーとして堂々と作品を世に出すという。全貌はまだ見えていないが、「善と悪はどこからやってくるのか」をテーマにしたシリアスな物語らしい。公開を前に映画・チャンネルNECOでは制作の舞台裏を追った全6回の番組が放送されている。そこで初めてクリエーターとしての山田の素顔が明かされるのか…。

ちなみに「~山田孝之の元気を送るテレビ」内でスピリチュアルカウンセラーのりかちゃん先生いわく、山田は「愛の星から来た大変態の宇宙人気質」らしい。なのでやはり、たかがか35時間でひもとこうなんてのはムダ。ここは脳を無にして、とことん山田ワールドを楽しむが賢明のようだ。

中山治美(ライター)

ページの先頭へ


2018.08.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第92弾!!
“世界のクロサワ”も認める天才監督が遺した貴重作!

昭和初期から戦中にかけて活躍、当時だけでなく今なお“天才”と呼ばれ続ける監督がいる。その名は山中貞雄。惜しくも中国戦線で病死したのだが、2018年は彼の没後80年、メモリアルイヤーにあたる。

天才は天才を知るのだろう、山中貞雄と同世代で、今年没後20年を数える “世界のクロサワ”こと黒澤明監督はこう語っている。「(略)すごい才能なんだヨ。本当に早く亡くなっちゃって日本映画の大きな損失だね」(黒澤和子編「黒澤明が選んだ100本の映画(文春新書刊)」)。

黒澤がくだんの本の中で取り上げていたのは、山中貞雄の代表作のひとつ、26歳のときに発表した「丹下左膳余話 百万両の壺」(’35)だ。時代劇の大スター、大河内傳次郎の当たり役、隻眼隻手(せきがんせきしゅ)のチャンバラヒーロー・丹下左膳が主人公なのだが、タイトルが示すごとく余話、番外編のような作りで、なんと左膳は矢場に居候中の用心棒、しかも女将の尻に敷かれている。このきっぷのいい女将・お藤姐さんを演じたのは、芸者からスター歌手となった喜代三(きよぞう)で、劇中、三味線を爪弾き、粋な小唄も披露する。この二人の掛け合いがめちゃくちゃ楽しく、映画はユーモアたっぷりにテンポよく進んでゆく。

さて左膳とお藤は、ひょんなことから孤児ちょび安の親代わりを務めることになり、少々浮かれ気味に。一方、くず屋からもらった壺を金魚入れに使っていたちょび安、実はその壺には「百万両の隠し場所」を記した図面が塗りこめられていて……と、外国映画にも精通していた山中貞雄は、単なるチャンバラヒーロー物にはせずハリウッドのコメディテイストを巧みに換骨奪胎、しかも「髷(まげ)をつけた現代劇」とも言うべきモダンなホームドラマに仕上げてしまったのだ。まさに天才ワザ!

戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の検閲によって後半のチャンバラシーンがカットされてしまったのだが、それでも山中貞雄の類いまれなる才能の片鱗は残っている。左膳とちょび安をチンピラが襲うシーン。左膳は言う。「おい安、目をつぶっていな。十数えるんだ。目を開いちゃいけねえぞ」と。そして、ちょび安の声に合わせてカットが細かく変わり、スリリングさを増していき、一瞬の勝負……また、この緊迫した場面を最後のやりとりで笑いに転換してみせる計算された“演出”がスゴイのだ。

わずか28歳10ヵ月で早逝した山中貞雄の監督作は20数本あるのだが、この「丹下左膳余話 百万両の壺」と「河内山宗俊」(’36)、「人情紙風船」(’37)と3作しかフィルムが現存しておらず、これは本当に貴重な一本。“世界のクロサワ”にも影響を与え、さらにはあの国民的コミック「ONE PIECE」の作者・尾田栄一郎も大好きだという、日本映画史に燦(さん)然と輝くエンタメ傑作を観逃すなかれ。

轟夕起夫(映画評論家)

ページの先頭へ


2018.07.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第91弾!!
恐怖あり、笑いあり(!?)なJホラー二大ヒロインの直接対決!

映画ファンの妄想の一つに「もし○○と××が戦ったら?」がある。代表例が「エイリアンVSプレデター」(’04)、そして二大怪獣王が戦った「キングコング 対 ゴジラ」(’62)だろう。そのホラー版と言えるのが「貞子 vs 伽椰子」だ!

山村貞子といえば’98年に公開された鈴木光司原作、中田秀夫監督の「リング」に登場した怨霊。あまりに強力な超能力を持っていたために養父によって井戸に沈められた。その恨みが込められた“呪いのビデオ”を見た者は一週間後に死ぬ。助かる方法は唯一、ほかの誰かに呪いのビデオを見せること。対する佐伯伽椰子は、’00年にビデオ発売された清水崇監督の「呪怨」に登場する幽霊。嫉妬した夫に惨殺された伽椰子はひとり息子の俊雄とともに怨霊化し、旧佐伯邸にかかわる者を呪い殺していくが、困ったことに助かる手立てはない。もしそうなったらあきらめて「痛くしないで」と言うしかない。

貞子と伽椰子、ジャパニーズ・ホラーを代表するホラー・モンスターでありホラー・アイドル。白い服にロングヘアーとファッションセンスに共通点はあるが、性格はかなり違う。貞子は意外と親切で、呪いのビデオを見た者にわざわざ電話をかけて呪ったことを報せてくれる。ただし無言電話だったり(原作やハリウッド版では「7日後」と死ぬ日までご丁寧に教えてくれるが)、顔を長い髪で隠していたりとちょっとシャイな女の子。伽椰子は人を差別しない平等主義者で、旧佐伯邸にかかわった人をもれなく呪い殺す。夫に喉をカッターで切り刻まれたためにうめき声しか出ないので、人とのコミュニケーションがちょっと苦手な人妻だ。

本作はそんな二大ヒロインを戦わせるというぶっ飛んだ内容だが、きちんとホラーの定石は守っている。呪いのビデオ=見なければいい。呪われた家=行かなければいい。なのに倉橋有里(山本美月)と上野夏美(佐津川愛美)はビデオをすぐ見るし、高木鈴花(玉城ティナ)も呪われた家に行ってしまう、それも深夜に。これがホラーのお約束。

シリーズも長くなると、同じキャラクターでも段々と変化していくのが常で、貞子たちも変化を見せている。「リング」第1作では貞子が呪った相手をどうやって殺すのか、実は一度も描かれない。姿を見せるのもラストだけ。しかし「貞子3D」で、ついに髪の毛を使った攻撃方法だったことが明らかになる。対する伽椰子も、最初は相手をあっちの世界(どこ?) に引きずり込むだけ。しかし、作品を重ねるごとに陰湿さがヒートアップし、お風呂で髪の毛を洗っていると、いつのまにか伽椰子の手が増えている(シャンプーを手伝っているのかもしれないが、声が出ないので「かゆいところはありませんか?」と聞けないところがつらい…)など、地味に怖い攻撃を繰り出してくる。映画・チャンネルNECOでは8月15日と16日に「『リング』『呪怨(劇場版)シリーズ』絶叫オールナイト」で過去作も放送されるので、そんなキャラクターの変遷を見比べるとおもしろいかもしれない。

そんなふたりの夢の対決が実現した本作のポイントは、バランス感覚のよさだ。貞子側、伽椰子側と交互に平等に描くストーリーはもちろん、最も見事なのが恐怖と笑いのバランス。実は恐怖と笑いは紙一重なのだが、この采配が絶妙だ。呪われた人の死に方がとにかくスゴイ。貞子を除霊しようとした霊能者たちが壮絶な死に方をするのだが、少々ムチャすぎ。それも3連発! 悲劇も3度続けば喜劇なのだ。

そして霊能者の常盤経蔵(安藤政信)が登場し、それぞれ語られてきた物語が融合する中盤から一気にヒートアップ。呪った相手をもれなく殺してきた貞子と伽椰子だが、ここからはまさに「キングコング 対 ゴジラ」で、強敵同士を戦わせて共倒れさせようというのだ。でも世界観も設定も違う上に、貞子はビデオとTVがないと出てこられないし、伽椰子は旧佐伯邸に引きこもりっぱなし。なのに、どうやって戦わせるのか? それは見てのお楽しみ!

「貞子vs伽椰子」は「リング」と「呪怨」の2本分の恐怖が一度に楽しめて、ところどころ笑えて、山本美月や玉城ティナたち美少女の恐怖に怯える表情が見られるというお得な1本だ。この夏、あなたも呪われてみませんか?

竹之内 円(ライター)

ページの先頭へ


2018.06.25

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第90弾!!
裕チャン初期出演作のミュージカルをTV初カラー放送!

また、この季節がやってきた。日活が運営する映画・チャンネルNECOの7月の特集は、7月17日に命日を迎える昭和の大スター・石原裕次郎の初期作品、しかも今となっては希少価値の高いミュージカル映画3本(「お転婆三人姉妹 踊る太陽」「ジャズ娘誕生 【デジタル復元版】」「素晴しき男性」)を一挙、お届けする。

中でもレアなのは、あの天才歌手・江利チエミと共演、TV初カラー放送となる春原政久監督の「ジャズ娘誕生~」だ。公開は’57年4月、まだまだ白黒フィルムが圧倒的に多かった時代に、国産三原色カラーシステム“コニカラー”で撮影、鮮やかな“総天然色”をうたった映画であった。が、プリントが退色し、長らくモノクロ版でしか観ることができなくなっていたところ、そのきらびやかな映像を最新技術で見事復元! 後に「銀座の恋の物語」(’62年/監:蔵原惟繕)でも組んだ二人の若き肢体、一挙手一投足が、素晴らしい解像度で再現されている(カメラマンは名手・姫田眞左久(しんさく)。著書「姫田眞左久のパン棒人生」に“コニカラー”について記述あり)。

主演はチエミが務め、舞台は伊豆からスタート、ツバキ油売りの彼女が東京の大劇場へと立つまでの“スター誕生”物語が描かれてゆく。前年にスクリーンデビューした、まだ初々しい裕チャンはジャズ楽団の“顔”で、専属シンガーという役柄。巡業で大島を訪れ、ヒロインと出会い、心惹(ひ)かれながらもアンビバレントな感情をにじませる。劇中、チエミがその魅惑のハスキーボイスを聴かせれば、裕チャンもムーディーなナンバーで応対し、これがとってもぜいたく! ちなみに画面の隅々へ目を配ると、楽団の一員に歌手の西田佐知子(新人時代でクレジットは西田佐智子)、またダンサーの中には“おひょいさん”こと藤村俊二や、後年、暗黒舞踏の創始者として知られることになる土方巽の姿も。

さて、順番からすれば、先に助演した「お転婆三人姉妹 踊る太陽」(本作も元はコニカラーで撮影された)は’57年1月、そして主演の「素晴しき男性」は’58年7月に封切られており、共に和製ミュージカル映画の第一人者・井上梅次監督の手によるものだ。この時期、“歌うスター”でもあった石原裕次郎はアクション物と並行して、ハリウッド製ミュージカルをお手本とした意欲的な作品にも必要不可欠な存在であったのだ。

「ジャズ娘誕生~」に登場するレビューシーン、「ジャンバラヤ」「ブルームーン」といったスタンダードな洋楽を披露するチエミの歌唱力も凄いが、木村威夫、佐谷三平(晃能)による大掛かりな美術セットも垂涎(すいぜん)もの。「雨に唄えば」(’52年/監:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン)、「バンド・ワゴン」(’53年/監:ヴィンセント・ミネリ)など、“ミュージカル映画のマスターピースへの憧(あこが)れ”を形にしたこの作品、早すぎた「ラ・ラ・ランド」(’16年/監:デイミアン・チャゼル)とも言えるかも。チエミの「わたしゃ大島油売り」で幕を開け、「雨降る町を」から裕チャン担当のジャジーかつアダルティな(日活お得意の)無国籍なシークエンスナンバーでつなぎ、チエミの十八番「カモンナ・マイ・ハウス(家へおいでよ)」で大団円を迎える終盤の連続レビューは圧巻、“至福の時”が刻まれている。

轟夕起夫(映画評論家)

ページの先頭へ





ご注意

お使いのAndroid標準ブラウザではこのサイトを閲覧することができません。
以下の推奨ブラウザをお使いください。