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2017年7月24日(月)

《ぴあ×チャンネルNECO》強力コラボ 【やっぱりNECOが好き!】 第70弾~第79弾

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第79弾!!
真夏の怪奇! トラウマ映画豪華2本立てで濃厚な一夜を

待ちに待った夏休み。旅行を計画している方も多いことだろう。そこで、旅先でトラウマな出来事どころか、旅そのものがトラウマになりかねない2本のケッサクをご紹介。7人が旅に出る2作にちなんで、7つの注目ポイントを見てみよう。時には帰ってこられない旅もある…。

19日の夜7時25分から放送される1本目は、大林宣彦監督の劇場用映画デビュー作「ハウス HOUSE」(‘77)。最愛の父親の再婚が許せない女子高生のオシャレ(池上季実子)は、友達を誘って7人で軽井沢にあるおばちゃま(南田洋子)の別荘に赴く。ところが、その別荘は女性を食べて生きている化物屋敷で…。今でこそアイドル主演のホラーは定番だが、この「ハウス」こそがアイドル×ホラーの第1号。当時の映画青年たちを熱狂させ、今なお世界中で支持されるカルト作だ。

それでは「ハウス」の注目ポイントを探っていこう。
①ホラーコメディーなのに殺され方がエゲつない! ピアノを弾いていると指が食われ、腕が飛び、足が宙を舞う。とにかく首、手、足が飛び交う恐怖!
②映像のクセがスゴい! 大林監督の特徴のひとつにアナログな特撮があるが、デビュー作だけに全開! 例えば、教師役の尾崎紀世彦のお尻にバケツがハマって階段から落ちる様子をコマ撮りのカタカタした映像で見せるなど、遊び心が満載なのだ(その多彩な映像表現が映画青年たちを熱狂させた理由だったりする)。
③友達がこつ然と消えたというのに、女子高生たちはみんなで楽しくスイカを食べている。それ以降は居たことさえ忘れるありさま! 女の友情ってそんなものなのね…。
④東京駅がウソ。7人が軽井沢へ行こうと東京駅へ集合するが、背景に見えている東京駅はまったくのデタラメなので注意しましょう。ちなみに、7人に絡んでくる男たちは音楽を担当したゴダイゴ。
⑤車椅子の独り暮らしで立つこともできないおばちゃまが、どうやって一人で生活していたのか誰も不思議に思わない。
⑥当時18歳だった池上季実子がヌードを披露!
⑦池上季実子だけじゃない! ひそかに(?)ベテラン女優・南田洋子もヌードになっている!(老婆役だが当時は40代)。

当時は助監督経験を積んで監督になるのが当然だった時代。そんな中、助監督経験なし・自主制作映画出身・CM監督出身で大メジャーの東宝に乗り込んで監督になった大林宣彦は、助監督や撮影現場にもトラウマを残したとか残さなかったとか…。

続く夜9時から放送される2本目は、多くの人の心に深く刻まれた「マタンゴ」(‘63)、またの名を“キング・オブ・トラウマ映画”! 青年実業家、その部下、漁師、作家、銀座のクラブ歌手、大学教授、その教え子の7人がヨットで遭難し、無人島に漂着。だが、その島は動物がいない奇妙な島で、異様なキノコだけが異常繁殖していた…。世紀の名作「ゴジラ」(‘54)の田中友幸プロデューサー&本多猪四郎監督&円谷英二特技監督コンビによる特撮映画にして、ジャパニーズ・モダンホラーの古典的名作とされている。

では、「マタンゴ」の注目ポイントを探っていこう。
①無人島かと思われた島だが、実は難破船が漂着していた。だが、乗組員がいないばかりか、遺体もない。そして、すべての鏡がなくなっていた…。その後、ジャングルの中で割れた鏡が見つかる。うーん、気になる!
②景気づけにウクレレ片手に歌い出したクラブ歌手だったが、どこからかバンドの演奏が聴こえてくる…。一体バンドはどこに隠れているんだ!
③飛んでいる鳥を見つけてライフルで狙うが、この島を避けるように飛び去ってしまう。一体なぜ!?
④海のど真ん中でラジオが聴ける。自分たちの遭難のニュースを聴いたところでなんと電池切れ…。予備の電池を買っておこうネ!
⑤難破船を宿代わりに使い始めた7人。深夜、みんなが寝ていると甲板を歩く音が…。窓からのぞいたその顔は…!
⑥ついに襲ってきた謎の生物マタンゴ! ライフルで応戦するが、ここで1950~60年代映画の“あるある”が登場。このライフル、いくら撃っても弾がなくならないのだ! 今どきのゾンビ映画のように、弾が切れて襲われるなんてことはない。撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃ちまくるのだ! それでも倒せないマタンゴって一体…。
⑦本作が多くの人のトラウマとなった原因が問題のラストシーン。スティーヴン・ソダーバーグ監督は、幼少時に「マタンゴ」を観てしまったばかりに、それから30年間キノコが食べられなくなるトラウマを負ったと告白している。

最後にとっておきのトリビアをひとつ。「マタンゴ」にはバルタン星人が出ている…というのはウソで、クライマックスで襲いかかってくるマタンゴの群れの声をよく聴くと、バルタン星人の「フォッフォッフォッフォッフォッ…」という声が聴こえてくる。実は、マタンゴの声を後にバルタン星人に流用したのだった。

そんなわけで、旅の恥はかき捨てと言うけれど、くれぐれもトラウマになるような経験だけはされないように…。この夏、あなたは人里離れた別荘と霧に覆われた無人島、どちらに行きますか?

竹之内 円(ライター)

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2017.6.26

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第78弾!!
社歌に込めた裕次郎の“ラストメッセージ”とは?

‘87年7月17日――といえば、戦後日本のシンボルであり、不世出のスーパースター、石原裕次郎の命日だが、今年は没後30年という節目の年。開局以来、裕次郎作品を多数放送してきた映画・チャンネルNECOでは、このメモリアルイヤーに裕次郎の貴重な出演作、関連番組などを一挙放送する。

まずは未ソフト化のレアな作品、兄・慎太郎の同名原作を基にした裕次郎初のTVドラマ主演作「小さき闘い」(’64)をご紹介。暗い過去を持つ主人公と、脳腫瘍で死期が迫った少年との心の交流を描いたヒューマンな一編で、放送されると大反響を巻き起こし、劇場版も作られることに。それが併せてオンエアされる「『小さき闘い』より 敗れざるもの」(’64)だ。実は筆者、取材で劇場版の少年役であった小倉一郎さんに話を伺ったのだが、ラストシーンで裕次郎が流した大粒の涙はまぎれもなくホンモノ。彼はアクションだけでなく、“芝居心のある名アクター”だったのだ。

さらに、浅丘ルリ子とのコンビ作、“愛の不毛と可能性”をテーマに二人が日本縦断1600kmを踏破する傑作ロードムービー「憎いあンちくしょう」(’62)と、最後の実写映画出演作となった「凍河」(’76)も放送。前者は旅の果てに裕次郎とルリ子がつかむ、永遠の太陽の祝福と生の絶頂感がまことに素晴らしい。後者は監督のためにノーギャラで友情出演(主演の中村雅俊の兄役)したもので、その斎藤耕一監督はスチールカメラマン時代、裕次郎の最初の写真集「海とトランペット」(’58)を撮った人である。裕次郎はこうした縁を大切にする“義の人”でもあったのだ。

また、かつての日活撮影所での仲間たち、浜田光夫や藤竜也らの貴重な証言を収録し、裕次郎が遺した数々の名演と功績をたどるチャンネルオリジナル番組「没後30年 石原裕次郎・映画の軌跡 ~日活スターが語る魅力~」も見逃せない。ちょっと“角度”が違うのが、フジテレビ系列で’14年にオンエアされた「ザ・ノンフィクション 石原裕次郎 最後のメッセージ~仲間に遺した歌~」。これは裕次郎が作ろうとした“幻の社歌”をめぐるドキュメンタリーだ。

社歌のタイトルは「太陽と星たちの賛歌」。「石原プロモーション50年史 石原裕次郎・渡哲也」の制作の際、偶然、その譜面が裕次郎邸から発見されたことからこの“感動の秘話”は始まる。時は’78年、宝酒造とのCM契約10周年のパーティーで披露すべく裕次郎がなかにし礼に作詞を依頼、作曲は羽田健太郎が手がけたが、楽曲は歌われることも録音されることもなく幻と化してしまった。なぜ、裕次郎は社歌を作ろうと考えたのか? そして、タイトルや歌詞の意味するところは? まき子夫人を筆頭にした関係者へのインタビュー、石原プロの秘蔵映像を交えながら、“裕次郎のラストメッセージ”を読み解いてゆく。

“幻の社歌”の制作背景の裏側から見えてくる巨星・石原裕次郎という人間の大きさ、そして優しさ。唯一無二の存在、日本の“太陽”であった「裕ちゃん」のまばゆい輝きをたっぷり浴びつつ、あらためて哀悼の意を表したい。

轟夕起夫(ライター)

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2017.5.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第77弾!!
「男たちの挽歌」の原点は日活アクションにあり!?

香港映画といえばブルース・リーやジャッキー・チェンのカンフーアクションが主流だったが、今や流麗なアクション+犯罪の“香港ノワール”が花盛り。「インファナル・アフェア」がハリウッドで「ディパーテッド」としてリメイクされたことはその象徴といえるだろう。

こうした流れの原点となったのが、ジョン・ウー監督の出世作となった「男たちの挽歌」(’86年)だ。アドレナリンが煮えたぎる二丁拳銃による銃弾の雨あられ、スローモーションの多用によるスタイリッシュな映像は、筋肉ムキムキ&火薬大量投下のハリウッド製アクションとは異なる“魅せるアクション”を確立させた。無論、スタイリッシュなだけの映画ではない。任侠映画さながらの男たちの友情と裏切りの熱いストーリーにもシビれるが、役者たちが強烈にガンを飛ばし合う「アウトレイジ」顔負けの“顔面演技”も必見! 若き日のチョウ・ユンファや、まだあどけないレスリー・チャンの顔が鮮明に脳裏に焼きつく。銃撃戦以外の普通のシーンでもなぜかスローモーションを多用することで、観る者の時間感覚をマヒさせ、いつしか濃厚な男たちの世界に完全にトリップ…。これぞジョン・ウー・マジック! タランティーノがメロメロになったのもうなずける。

第1作の記録的ヒットを受けてシリーズ化された作品群から、映画・チャンネルNECOでは「男たちの挽歌Ⅱ」を7月に、「アゲイン/男たちの挽歌Ⅲ」を8月、「狼/男たちの挽歌・最終章」を9月に放送。ちなみに、ジョン・ウーの代名詞といえばアクションシーンにやたらと飛び交う鳩だが、その唯一無二の演出が確立された「狼/男たちの挽歌・最終章」は必見作といえるだろう。

ところで、香港ノワールの原点は実は日本映画、それも60年代の日活アクションにあった。嘘だと思うなら、映画・チャンネルNECOで放送されている当時の日活映画とよ~く見比べてみて欲しい。主演のチョウ・ユンファのコート、サングラス、タバコの吸い方に至るまで、そう、日活アクションの大スター・小林旭にそっくりなのだ!

ユンファ自身、小道具の使い方を真似たと語っているが、なぜ、ウー監督もユンファも日活アクションを観ているのだろうか? 香港映画の歴史をひもとけば、すぐに答えは分かる。60年代、香港の映画会社ショウ・ブラザーズは日活のアクション映画を200本(!)も輸入して公開していたのだ。そして、自分たちでもこんな映画を撮ろうと、日本から日活アクションの監督(井上梅次、中平康、古川卓巳etc)を招いて教えを請い、香港アクション映画の基礎を作り上げた。50年代末~70年代初めの小林旭みたいなユンファが、80年代の「男たちの挽歌」に登場したのも全く不思議ではないわけだ。

来年公開予定のジョン・ウー監督、福山雅治&チャン・ハンユー主演の新作「追捕 MANHUNT」は、高倉健主演の日本映画「君よ憤怒の河を渉れ」(’76年)のリメイクである。ウー監督いわく「『男たちの挽歌』のような熱さを出せればいいなと思っている」。日本から香港へと海を渡った日活アクションが香港ノワールに進化し、そしてハリウッドへ渡ったウー監督が再び香港映画を、それも日本映画のリメイクを日本で撮る。映画の歴史を駆け巡るような、胸の高鳴る出来事だ。

モルモット吉田(ライター)

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2017.5.9

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第76弾!!
西田敏行版金田一はトラウマだらけ!

世の中には、期せずして観た者の心に深い傷を残す作品がある。そんなトラウマ映画を特集する「【原点怪奇】劇場」の第2弾は、斎藤光正監督の「悪魔が来りて笛を吹く」。TVや映画で大人気の金田一耕助を主人公としたミステリー映画なのに、ドラマ数本分のドロドロな人間関係と、トラウマポイントのつるべ打ちによって、今なお多くの人の心に残っている1本である。

毒殺事件の容疑をかけられた元子爵の椿英輔が、釈放された後に自殺。ところが、死んだはずの英輔の目撃情報が続出し、名探偵・金田一耕助が招集されたところ、その直後に第一の殺人が起こってしまう…。

劇場公開されたのは’79年1月20日。石坂浩二の映画版第4作「女王蜂」(‘78)と第5作「病院坂の首縊りの家」(‘79)の間、古谷一行のTV版が終了した直後で、監督はTV版「獄門島」を撮った斎藤光正が手掛けた。そんなこともあってか、石坂・古谷版とは違う路線を狙ったようで、かなりおどろおどろしさが強調された異色の金田一作品となっている。

まず、本作を観た者の脳裏に強烈に焼きついているのが、ポスターや本編のタイトルバックに使われているスキンヘッドに「スター・トレック」のミスター・スポックのようなとがった耳、長い爪の手には黄金のフルートという不思議なマネキン人形だろう。恐らくタイトルを象徴したものだと思われるが、この悪魔のマネキン人形が第一の殺人の直前にスーっと画面を横切るのだ。ところが、この悪魔のマネキンはその後、一度も出てこない。ゆえに、余計に鮮烈なイメージとなって記憶に残るのだ。

では、改めて本作のトラウマポイントを探っていこう。

まずは冒頭。朽ち果てた教会のようなところで苦しみ、叫び声を上げる女。その祭壇から流れてくる、とても一人分とは思えないほどの大量の血…。金田一が椿家からの依頼で呼ばれた場所もすごい。関係者に事情を聞く場ではなく、なぜか死んだはずの椿子爵の霊を呼び出す交霊会だったりする。この奇妙な椿家の特徴は、なんといっても忌まわしい血の因縁なのだが、それを象徴するのが左肩にある炎のようなアザ(劇中では火焔太鼓と呼ばれる)。なぜか椿家の血を引く者に漏れなく付いている。実に不思議な家系である。
 そして、正式に調査依頼を受けた金田一は神戸へ。宿に着き、火事になった椿子爵の別荘の焼け跡へ手がかりを探しに行こうと言い出すが、何を思ったのか真夜中に出発。うす暗い焼け跡で見つけた落書きが「悪魔ここに誕生す」。ひぇぇぇ~! こうして呪われた椿家の血にまつわる連続殺人が起こっていくのである…。

実は、本作には原作と大きく違うところがある。「悪魔が来りて笛を吹く」といういかにも不吉なタイトルだが、本作では劇中で使われるフルート曲としか登場しない。しかし、原作ではこの曲そのものがトリックになっていて、犯人の正体につながったりする。本作ではその設定がなくなってしまったが、そのおかげでもの悲しくも美しいテーマ曲「黄金のフルート」という名曲が誕生した。作曲したのは尺八奏者の山本邦山で、フルート曲なのに和のテイストがあり、日本的な血や運命を感じさせるものに仕上がっている。

その曲が絶妙な効果を上げているのが、金田一と犯人が対峙する浜辺。すべてを自白した犯人が最後にフルートを聴かせる…という名シーンである。いやあ、本作のタイトルが「悪魔が来りて笛を吹く」で本当に良かった! これが“もしも犯人がピアノを弾けたなら”、犯人は浜辺にピアノを持ってきたのだろうか? 「悪魔が来りて指揮をする」だったら、オーケストラを連れてきて…「悪魔が来りてカスタネットを叩く」だったら…。おっと、妄想し過ぎました。

金田一耕助を西田敏行が演じている点も、本作の大きなポイント。これほど金田一のイメージとかけ離れた俳優もいない…と言いたいところだが、実際は悪くない。西田敏行らしいユーモアが役ににじみ出ており、「早く犯人を見つけてください!」なんて言われたら「いま見つけようと思ったのにぃ~」なんて言い出しそうな、親しみやすい金田一なのだ(現に、劇中では椿家のご令嬢に抱きつかれるなど、明らかに慕われている!)。西田敏行は’80年の「池中玄太80キロ」でまさに大ブレイクする直前。つまり「金田一耕助80キロ」…ちょっと重いか!?

数ある横溝正史の金田一耕助シリーズのなかでも、ドロドロの愛憎が渦巻く悲しくもおぞましい作品として名高い「悪魔が来りて笛を吹く」。そのせいか、公開時のキャッチコピーは「この恐ろしい小説だけは、映画にしたくなかった——横溝正史」というもので、つまり、原作者・横溝正史にとってもトラウマとなっている作品だったのだ!

ん? でも、この「悪魔が来りて笛を吹く」は2度目の映画化ですよ!
※‘54年に片岡千恵蔵主演で映画化。’77年のTVドラマの古谷一行版も入れると3度目だったりする。

竹之内 円(ライター)

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2017.5.9

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第75弾!!
脳裏に焼き付くトラウマ映画よ再び!

地獄に落ちる母娘をオカルト色満載で描いた神代辰巳の「地獄(1979)」、破傷風を患った少女が「エクソシスト」の“リンダ・ブレア化”する「震える舌」…。幼少時にうっかり観て、その後、心に深い恐怖を刻んでしまったトラウマ映画がある。映画・チャンネルNECOでは、そんな70~80年代のトラウマ映画を特集するチャレンジング(?)な企画「【原点怪奇】劇場」がスタートする。初回を飾るのは、第1回横溝正史ミステリ大賞を受賞した斎藤澪の小説を、名匠・増村保造が監督した「この子の七つのお祝いに」。ご記憶の方もいるかと思うが、これが実にトラウマになる映画なのである。

イタリアに渡り、フェデリコ・フェリーニやルキノ・ヴィスコンティといった巨匠たちの下で映画を学び、「痴人の愛」や「曽根崎心中」など、各方面から高い評価を得る傑作を放ってきた増村保造。劇場用映画の遺作となった本作が、イタリア映画はイタリア映画でも、「サスペリア」などで知られるダリオ・アルジェント流のジャッロ(扇情的な殺人シーンが売り物のサスペンス映画で、本格的な謎解きよりもショッキングな映像や意外な展開を優先する)風のトンデモ・サイコホラーになるとは、誰が予想したであろう。だが、思い返せばトンデモ・ドラマの最高峰「スチュワーデス物語」の脚本を書いたのも増村保造であった。うん、なんだかちょっと納得。

一人暮らしの女性が鋭利な刃物でメッタ刺しにされるという猟奇的殺人事件が起きる。その事件の裏に次期総理を狙う政治家と、その妻で政界を動かす力のある占い師がいるとにらんだルポライターだったが、彼も数日後に惨殺死体で発見される。その調査を後輩の記者が受け継ぐと衝撃の真実が待っていた…という、内容なんてどうでもよくなってしまうのが、この映画最大の“トラウマ・ポイント”、岸田今日子演じる真弓の狂気っぷりである。

古びた木造アパートの一室で、真弓は一人娘の麻矢とひとつの布団に入り、寝かしつけようと優しい表情で話し始める。「お父さんはね、お母さんと麻矢を捨てて出て行ったの。恨みなさい。恨みなさい。大きくなったら仕返しをしなさいね」。そう言いながら結婚したときに撮った写真の夫の顔に針を刺す…(すでに顔は穴だらけで判別はつかないが)。真弓が娘に発する言葉の大半が、自分たちを捨てた夫への恨み言なのだ。そして、真弓が“この子の七つのお祝いに”してあげたことが壮絶を極める。愛娘の麻矢が寝ている横で、頚動脈と手首を切って自殺(!?)。血で真っ赤に染まった布団と母親。まさにトラウマの英才教育ここに極まれり…である。だが、回想シーンで真弓のさらなる狂気が明かされていく。「死ね、死ね」と言いながら大根や豆腐に何百本もの針を刺していたり、娘が恨みを忘れないようにと焼けた火箸を顔に当てたり…。これでもかと岸田今日子がトラウマを植え付けてくるが、驚がくポイントはまだまだあるのが本作の末恐ろしいところ。題して、“この映画の七つのお笑いを”——。

1.畑中葉子の惨殺シーン。刺されたときは服を着ていたのに、発見されたときにはなぜか胸をはだけている(大サービス!)。
2.殺人現場に犯人の手形が残されているのだが、力士の色紙かと思うくらいくっきりと残されている(証拠残しすぎ!)。
3.捜査していた刑事たちがそれっきり出てこない(解決する気ゼロ?)。
4.犯人の手形を見せて「こんな手形でしたか?」と聞く方も聞く方だが、「ああ、似てますね」と答える方も答える方だ(これに似た手形なんて、人類と同じ数だけあると思う)。
5.岩下志麻のセーラー服姿(大サービスPART2!)。
6.真犯人の顔にあるはずの火傷がラストにしかない(化粧で隠してた?)。
7.最後の謎解きがなぜか手相の話になる(しかも登場人物全員がやたらと手相に詳しい)。

もうヘトヘトになるほどの笑撃シーン…いや、衝撃的シーンの連続だが、最後には真弓最大の狂気が待っている…!

この映画を観終わった後、きっと「うちのお母さんは優しくて良かった」と思うことだろう。でも本当にそう? あなたの知らない顔があるかも…。イヤ~な想像をかき立てる、これぞトラウマ映画の真骨頂だ。

竹之内 円(ライター)

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2017.2.27

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第74弾!!
80’sブーム再燃の今こそ、バブルカルチャーのトップランナー、ホイチョイムービーが“懐かしくって新しい”!

真っ赤なボディコンスーツに身を包み、バカでかい携帯電話(ショルダーフォン)を肩から下げた女芸人・平野ノラのブレイクもあり、もはやネタとして消費されつつあるバブル時代。あの時代に学生時代を送った者としては、青春時代を小馬鹿にされているような気にもなり、ただただ苦笑するしかないが、確かにあのころ、世の中全体が浮かれていた。

ドラマも映画もCMも無駄に金がかかっていたし、究極の売り手市場で、ボンクラ学生だった筆者のもとにも一流企業から貢物がガンガン届くという異常な状況。まぁ実際は就職活動なんて一切せずに、フリーライターなんてヤクザな商売を選んでしまったのだが、今思えば会社説明会に行きまくってお車代(1万円とか普通にもらえました!)で荒稼ぎしておけばよかったな~。

おっと話がそれた。そんなバブル絶頂期に制作されたホイチョイ3部作は、まさに時代の空気を象徴する映画ばかりだ。空前のスキーブームを生み出した「私をスキーに連れてって」(原田知世&三上博史主演、劇中歌はユーミンの大ヒット曲「恋人がサンタクロース」!)、アーバン・マリンリゾート・ストーリーと銘打たれた「彼女が水着にきがえたら」(原田知世&織田裕二主演、車はトヨタのセリカ・コンバーチブル!)、西海岸のシャレオツな雰囲気を湘南へ引き込んだ「波の数だけ抱きしめて」(中山美穂&織田裕二主演、懐かしのAORナンバー!)…。

どの作品も流行のスポットやファッションを全編にちりばめ、美女とイケメンが運命の出会いを果たし、さまざまな誤解や障害を乗り越えて結ばれる。若者たちはストーリー云々よりも、サザンやユーミンで味付けされた映画全体を包むオシャレな雰囲気にうっとりとし、あこがれていた。そう、まさにホイチョイこそが、バブリーな若者たちの流行を先導していたのである。

実は’87年の「私をスキーに連れてって」の出現まで、若者向けの映画やドラマは、どちらかというと泥臭く、説教臭いモノが主流だった。だが「私をスキーに連れてって」の爆発的なヒットで一変。原田知世の相手役を務めた三上博史は翌’88年のラブコメ「君の瞳をタイホする!」で主演に抜擢され、こちらも高視聴率を記録。その結果、トレンディドラマが大量生産されていくことになるのだ。バブルカルチャーのトップランナー=ホイチョイということが、お分かりいただけただろうか?

最終作「波の数だけ抱きしめて」の公開は’91年8月。バブルはとっくにハジけていたが、このあたりまではギリギリ余韻を引きずっていた。しかし翌年以降、急速に日本経済は冷え込み、“失われた20年”へとつながっていく。

‘07年、平成不況まっただ中にホイチョイは「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」でバブルを俯かんし、笑い飛ばしてみせた。この自己ツッコミ精神こそ、時代を“サーフィン”してきたホイチョイ流。太眉×ソバージュ×ボディコンの吹石一恵が最高にキュートで要注目ですよ!

伊熊恒介(ライター)

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2017.1.26

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第73弾!!
おじさんの夢をかなえるアニメ!?熱い“ガルパン愛”を胸に秘めた強者ぞろいで“ガルパン”座談会、パンツァー・フォー(戦車前進)!!

「ガールズ&パンツァー」のTVアニメ全12話と総集編、OVAの「ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!」、そして興行収入24億円を記録する大ヒットを記録した「ガールズ&パンツァー 劇場版」。それらが初めて一挙放送される「“パンツァー・フォー!”NECOで『ガルパン』イッキ観作戦です!」を記念して、『ガルパン』の魅力を世に広めるべく、某居酒屋に集ったねこさんチームの面々。まずは各人のプロフィールを紹介しておくと―—。

ミリ夫=少年時代、戦車のプラモデルづくりに熱中したミリタリー好きの42歳男性。

モエ太=美少女系アニメに目がないアニヲタの28歳男性。

ゆかりん=アニメビギナーながら“ガルパン”にどハマりした26歳女性。

みほみほ=アニメとゲームに人生を捧げる30歳女性。

いずれも熱い“ガルパン愛”を胸に秘めた強者ぞろい。彼らの熱を受け、目の前のあんこう鍋もぐつぐつ煮え立ってきた。乾杯の合図とともに、“ガルパン”座談会、パンツァー・フォー(戦車前進)!!

美少女アニメと見せかけて、ミリタリー描写はマニアもうなるガチ度!

モエ太「僕なんかは今まで数え切れないほどアニメを観てきましたけどねえ、『美少女×戦車』という斬新な組み合わせにはど肝を抜かれましたよ。脚本は女子高生バンドを描いた『けいおん!』の吉田玲子先生でしょう。“ガルパン”も少女たちが集まって目標に向かって走っていく物語。少女たちの成長物語を織り交ぜて、さすが吉田先生って感じですよ」

ゆかりん「私はモエ太さんに勧められて“ガルパン”を観始めたんです。立川の映画館で1年以上もロングランしていて、私の周りでもすっごく話題になっていましたから。最初に観たときは、戦車道が女子のたしなみっていう設定がいいなぁって。戦車道が華道、茶道と並ぶ扱いなんですよね。だって、ごっつい男たちが戦車で暴れ回っていたら引きますもん(笑)。私みたいなアニメに詳しくない女の子でもすぐにのめり込んじゃいました」

ミリ夫「(ビールジョッキを思いっきり机に置いて)いやいやぁ違うんだよぉぉ! “ガルパン”はね、『美少女×戦車』という設定から、戦車の方にガチで踏み込んでるからすごいんだよ。戦車って言ったら、世界をリードしていたのはやっぱりドイツでしょう。だから主人公がドイツのⅣ号戦車に乗っているのを観たとき、『わかってるなぁ!』って感動しましたよ俺は。そのパッションに応えて言うと、そもそも戦車ってのはだな…」

みほみほ「ちょっと、ミリ夫さん完全に“ガルパンおじさん”化してますよ!」

ミリ夫「え…“ガルパンおじさん”ってなに? だれ…?」

みほみほ「“ガルパン”を好きになったミリタリーヲタクのおじさんのことです! 劇場版を観て、あまりの衝撃と面白さに言葉を失って『ガルパンはいいぞ』としか言えない人たちです(笑)」

モエ太「プロレスラーの蝶野さんなんかもガルパンおじさんだよね(笑)」

ミリ夫「あ、そしたら俺、完全に“ガルパンおじさん”だ…。でも、小さいころにプラモデルで戦車を作っていた俺としては、本当にうれしいんだよ! しかもPLATZ(模型メーカー)とコラボして戦車のプラモデルも発売しちゃってるしさぁ、ホント泣けるぜぇぇぇ。あこがれの戦車が大迫力で動き回って、ドリームマッチも実現して、それに女の子たちにもウンチクを披露できて…」

ゆかりん「ちなみに、映画・チャンネルNECOではドキュメンタリー『10(ヒトマル)式戦車のすべて』も放送されるそうですよ」

ミリ夫「な、なんだってぇぇぇ!! 10式といえば陸上自衛隊の4代目の―—」

(一同沈黙)

戦車好きのおじさんから普通の女の子までをも魅了するワケとは?

モエ太「ミリタリーに詳しくない僕なんかは、どちらかと言うとロボットアニメを観る感覚で楽しんでいますね。砲撃音や履帯の音はめっちゃリアルに本物を再現しているし、とにかく迫力がハンパじゃありませんよ。あの履帯のたゆませ方なんか…」

ミリ夫「はいっ! たまりません!! “街道上の怪物”とか、ちょいちょい出てくるキーワードにしても、ミリタリーファンにはたまらないマニアックなところを突いてくるんだよなぁぁ(ビールを一気に飲み干す)。はいっおかわりっ!」

みほみほ「ちょっとミリ夫さん飲み過ぎですよ! それはさておき、『ガルパン』は女の子たちの物語もいいんですよ。戦車道の家元に生まれた西住みほが、ある作戦で失敗をして大洗女子学園に転校してくるところから物語が始まるんです。廃校の危機を免れるために再び彼女は戦車道を歩むことになって、全国大会の優勝を目指して他の女子校とバトルを繰り広げて…」

ミリ夫「なんだかクリント・イーストウッドの『許されざる者』を思い出させるよね」

モエ太「実際、西部劇や戦争映画へのオマージュといえるシーンもあって、そのサブカル熱量には圧倒されっぱなしですよ。大洗女子学園の対戦校はそれぞれドイツやアメリカの国家性みたいなものをモチーフにしているし」

みほみほ「ドラマCDでフィンランド系の継続高校の生徒が紅茶を飲んでいるシーンがあって、監修の先生が『フィンランド人はあまり紅茶を飲まない。コーヒーに変えてください』って言ったらしいですよ(笑)」

モエ太「スタッフの皆さまの本気度には恐れ入るね」

みほみほ「大洗女子学園の敵にも個性豊かな面々がそろっていて、やたらと会話に格言を挟み込んでくるダージリンさんなんかたまりませんっ!」

ゆかりん「『サンドイッチはね、パンよりも中のキュウリが一番おいしいの』とか」

(一同爆笑)

ゆかりん「私が大好きなキャラは秋山優花里さん。みほさんを尊敬するあまり忠犬のようにくっついたり、みほさんに誉められて喜んだり、とにかくかわいいんです。それに、私なんかは戦車のことぜんっぜん知らないんですけど、優花里さんがやさしく丁寧に解説してくれるんです」

モエ太「懐深いよねぇ、『ガルパン』は。若い女の子から(ここにいる)おじさんまでとりこにするんだから(笑)」

ミリ夫「よしっ、一挙放送を祝して大洗に聖地巡礼だ!」

ゆかりん「わたし、大洗行ってみたかったんですっ! アニメの中に登場するお店にも行ってみたーい」

モエ太「大洗町は駅に降りた瞬間『ガルパン』一色ですよ。恒例のあんこう祭りで『ガルパン』のイベントが行われるようになってからは、毎年10万人を動員しますからね。もはや『ガルパン』が大洗町の経済を支えてる的な(笑)。それに僕は、大洗町にふるさと納税して、『ガルパン』オリジナルグッズをゲットしましたからねっっ!」

一同「(羨望の眼差しで)おぉぉぉぉぉすげぇぇぇ!」

みほみほ「ああ、早く“リアル『ガルパン』ワールド”に飛び込みたい。もちろん、ダージリンさんの格言の書かれたTシャツを着て…」

一同「(グラスを持って)いざ、大洗に…パンツァー・フォー!!」

ゆかりん「いえいえ、ここはやっぱり優花里さんの名ゼリフで締めさせてください! ヒヤッホォォォォウ! 『ガールズ&パンツァー』、最高だぜぇぇぇぇぇぇ!!」



2016.12.26

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第72弾!!
家族みんなで笑って、そして人生を知る。心に染みる深イイ三谷流喜劇を大特集!

先日、三谷幸喜脚本の大河ドラマ「真田丸」がついに最終回を迎えた。1年を通して「三谷幸喜の新境地!」と言っていい出来栄えだったが、一方で、ちゃんと作家性も刻まれている。ひとつ例を挙げるなら、最終局面における真田幸村のキャラクターを、演じる堺雅人が「不測の事態に直面し、矢面に立つことになった市役所の課長」と分析していたこと。つまり、図らずも現場の最高責任者となり、決断を迫られる存在になったのだ、と。

なるほど、それは三谷幸喜の作劇の核(コア)を的確に表現していると思う。例えば、大晦日の高級ホテルを舞台にした「THE有頂天ホテル」。カウントダウン・パーティの準備に追われるスタッフを尻目に、次から次に起こるトラブルとさまざまな人間模様が描かれてゆくのだが、キーマンは役所広司演じる副支配人だ。彼は三谷流の「決断の物語」を代表する人物として登場。ただし、真田幸村のようにカッコ良くはなく、てんやわんやな現場でドタバタと、滑稽(こっけい)な姿をさらしてしまうのであった。

物事が思い通りにいかないのはこの世の常。かの喜劇王チャールズ・チャップリンはこう言った。「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」と。三谷幸喜の作品もそう。人生を接写して見るか、俯瞰(ふかん)で眺めるか。映画・チャンネルNECOでは、そんな三谷流の滋味深い物語を味わえる監督作4本を放送。元日の「THE 有頂天ホテル」を皮切りに、以降は毎週金曜日に「ザ・マジックアワー」(6日)、「みんなのいえ」(13日)、そして「ラヂオの時間」(20日)と、製作順とはちょうど反対に、その源流を探るような放送プログラムを組んでいる。

ところで、三谷幸喜といえばビリー・ワイルダー好き、というのは有名過ぎる話だが、チャップリンからも多大な影響を受けておりまして…。何しろ小学5年生のとき、学校のクリスマス会で「街角の浮浪者」なる出し物を企画し、黒のだぶだぶのスーツを着て主役を務め、トレードマークの“放浪者チャーリー”に成り切ったことがあるのだから(ちなみに、チャップリンをめぐる三谷さんのすごいエピソードはまだまだあります。調べてみて!)。

さて、本人たちは至って真剣、大真面目であるものの、外から眺めると滑稽(こっけい)の極みに。とどのつまり、三谷幸喜のつづる世界とは、我々の姿の“映し鏡”そのものなのだが、まあ、正月だもの、自分のことは一旦棚上げして(笑)、家族みんなで楽しんじゃいましょうや。あっ、「真田丸」ロスの方もぜひぜひ!

轟夕起夫(映画評論家)

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2016.11.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第71弾!!
過激に、オリジナルに裏番組をぶっとばす、NECO流“オトナの音楽祭”!

流行りのアイドルグループや若手バンドが出演する音楽番組に興味を引かれない皆さま、お待たせしましたっ! 日本レコード大賞の真裏の12月30日、映画・チャンネルNECOがやってくれますよ。絶っ対にここでしか観られない“オトナの音楽祭”! 中村雅俊に舟木一夫、THE YELLOW MONKEYにYMO、そしてまさかの…。羅列しただけでも驚異的なごった煮…いや、バラエティ感。そのラインナップを紹介します。

① 16時~中村雅俊2016/ミュージシャン編

口火を切るのは、映画・チャンネルNECOが半年にわたって特集している“推しメン”(?)こと中村雅俊の「中村雅俊2016/ミュージシャン編」。最新のCD制作に密着しながら、名曲「ふれあい」のレコーディング秘話やライヴ映像、インタビューなどを織り交ぜつつ、彼のミュージシャンとしての魅力にディープに迫る。素朴で爽やかな歌声に、音楽に対する真摯な姿勢。子どものような純粋さと、大人の渋みを併せ持った中村の優しい歌声に癒やされるはずだ。

② 17時~舟木一夫コンサート2015 in 中野サンプラザ

続いては、日本歌謡界の大御所にして熱狂的ファン(フナキスト?)を抱える舟木一夫が登場。「舟木一夫コンサート2015 in 中野サンプラザ」では、2時間に迫るコンサートの模様をまるっとお届け。驚かされるのは、フナキストの皆さんが客席から花束やプレゼントを矢継ぎ早に持ち込む中、歌うことをやめずにプレゼントを受け取り、朗らかにファンと交流する舟木様のお姿。その間、歌が一切ぶれないのは「さすがプロ!」とうならざるをえない。舟木様の包容力ある歌声にファンへの深~い愛情、そして唯一無二の個性がにじみ出たコンサート。“高校三年生”の気分に戻って独特の世界観に酔いしれてみては?
•想い出通り
•東京は恋する
•ブルー・トラムペット
•くちなしのバラード
•花咲く乙女たち
•友を送る歌
•その人は昔のテーマ
•北国の街
•哀愁の夜
•高原のお嬢さん
•眠らない青春
•宵待草
•ゴンドラの唄
•浮世まかせ
•明日咲くつぼみに
•あゝ青春の胸の血は
•君たちがいて僕がいた
•高校三年生
•学園広場
•初恋
•夕笛
•~吉野木挽歌~(アカペラ)
•絶唱
•(アンコール)君よ振りむくな

③ 19時~パンドラ ザ・イエロー・モンキー

④ 21時~「FAN」(1998/02/20放送)ザ・イエロー・モンキー ゲスト出演回

19時からは、再結成で話題のTHE YELLOW MONKEY 2本立てを。「パンドラ ザ・イエロー・モンキー」は、彼らが’98年から1年がかりで行った113本の全国ツアーを収録。ボーカルの吉井和哉が疲労で倒れ、満身創痍の状態で圧巻のパフォーマンスを繰り広げた伝説のツアーだ。

当時、「SPARK」「楽園」などのヒット曲を連発し、他を寄せ付けない輝きを放っていた彼らは、何を考えていたのか? 白熱のライヴと彼らの素顔を交互に見せることで、THE YELLOW MONKEY というロックバンドの核に切り込み、ほとんどヒューマンドラマの域にまで達している。監督はTHE YELLOW MONKEYのMVを数多く手がけ、吉井をして“第5のメンバー”と称される高橋栄樹。そんじょそこらの音楽番組とは一線を画す、魂を揺さぶるドキュメントなのだ。

日本テレビ系の音楽番組「FAN」からは、’98年2月20日に放送されたTHE YELLOW MONKEYの出演回も放送。こちらはじっくり彼らの代表曲を楽しむにはうってつけで、「BURN」「LOVE LOVE SHOW」など、懐かしのヒット曲のオンパレード! 「パンドラ~」と続けて観れば、ロック魂と歌謡曲魂が同居する彼らの楽曲がより胸に迫ってくる。歌詞の字幕を観ながら熱唱しつつ、グループ結成秘話などの衝撃暴露トークにも耳を傾けよう。
•BURN
•LOVE LOVE SHOW
•球根

⑤ 21時30分~YELLOW MAGIC ORCHESTRA (’80 WORLD TOUR IN AMERICA)

21時30分からは、“イエロー”繋がりでYMOが登場。’80年に彼らが行ったワールドツアーからアメリカ・ロサンゼルス公演の模様を収めた「YELLOW MAGIC ORCHESTRA(’80 WORLD TOUR IN AMERICA)」は、未パッケージ&35年ぶりの放送という“レア感”が話題の1本。35年前、フジテレビが衛星生中継したのを覚えている方はかなりコアなファンだろう。不滅の名曲「RYDEEN」などの電子音の洪水、表情を変えず、淡々と演奏し続ける姿は今観てもカッコいい。当時最先端だった映像技術の駆使も逆に新鮮で、いかにYMOがエキセントリックでクールだったかを体感できる。80年代テクノポップにハマった世代には感涙もののプログラムだ。
•RIOT IN LAGOS/ライオット・イン・ラゴス
•SOLID STATE SURVIVOR/ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー
•RYDEEN/ライディーン
•BEHIND THE MASK/ビハインド・ザ・マスク
•MAPS/マップス
•NICE AGE/ナイス・エイジ
•TONG POO/東風(トンプー)
•LA FEMME CHINOISE/中国女
•CITIZENS OF SCIENCE/シチズンズ・オブ・サイエンス
•ALL YOU NEED IS LOVE/愛こそはすべて
•TECHNOPOLIS/テクノポリス
•ZAI KUNGTONE BOY/在広東少年
•FIRE CRACKER/ファイアークラッカー
•COSMIC SURFIN/コズミック・サーフィン

⑥ 22時45分~ゴッドタン 2014マジ歌ライブin中野サンプラザ【特別編集版】

そして大トリは…まさかの「ゴッドタン 2014マジ歌ライブin中野サンプラザ【特別編集版】」。深夜番組の域を超えて、もはやチケット入手困難なライブとして定着した「マジ歌」だが、バナナマンの日村がアイドルばりのコスチュームで歌ったり、東京03・角ちゃんが得意のギターをかき鳴らして熱唱したりと、ヘタなミュージシャンよりクオリティが突き抜けている。
•ヒム子の恋する独裁国家|日村勇紀(バナナマン)
•USA|角田晃広(東京03)
•抱きしめてイムハタ|劇団ひとり
•ヘブンオブアメリカン|後藤輝基(フットボールアワー)
•ダブルリターン|後藤輝基(フットボールアワー)
•Danceでバコーン|℃-ute
•破りいてぇ|小峠英二(バイきんぐ)
•ヒム子ーズのテーマ| 日村勇紀(バナナマン)
•The shocking soup of virgin marry~華麗なる欲望~|ダークネス(マキタスポーツ)
•ヴァージンマリー~聖母マリア~|ダークネス(マキタスポーツ)
•一緒にいるよ&FIGHT FOR MY LOVE メドレー|大地洋輔(ダイノジ)
•ションベンキスミー|角田晃広(東京03)
•ココロノハコ|角田晃広(東京03)
•ワンモアラブ|劇団ひとり
•オラと母ちゃんの一週間|小木博明&松丸友紀
•さくら~松丸結婚Ver~|日村勇紀(バナナマン)

こうしてノンストップの笑いと共に幕を閉じる「NECO 音楽まつり」。映画チャンネルとは思えない本気度満点のスゴ過ぎるラインナップ…今後も過激に、オリジナルに裏番組をぶっとばしてください!

横森文(ライター)

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2016.10.24

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第70弾!!
共感&前のめり必至の“記録以上に記憶に残る青春ドラマ”

昨今、民放のTVドラマが厳しい状況にある。1クール(3ヵ月)の内に10回と持たずに打ち切られる番組も珍しくない。そんな現在からは想像がつかないだろうが、人気の高さゆえ、2クールの放送予定が1年にまで延びた伝説のTVドラマがあった。’75年から日本テレビ系で放送された青春ドラマの金字塔「俺たちの旅」である。

あらすじは、三流私立大に通う学生カースケ(中村雅俊)とその親友オメダ(田中健)に、同郷の先輩で早大OBのグズ六(津坂まさあき 現・秋野太作)が加わって織り成す友情と人間模様…と言ってしまえばそれまでだが、脚本の鎌田敏夫がつづるセリフの優しさや厳しさ、どこかノスタルジックな吉祥寺の風景がいつまでも頭から離れない。商店街で撮影した“3人肩車”(!?)は伝説的な名シーンだ。

「人生は楽しくなきゃいけないんだよ」と言ってのけるカースケは、友情のためなら命も差し出すような男。こういう性格の男に惚れる女は多いし、感化される男も多い(かくいう私もその一人!)。真面目な親友オメダがその影響を受ける筆頭格だが、カースケみたいに割り切れないのが“ダメ男”たる所以。優柔不断ながら時にはカースケを叱咤する社会人のグズ六が一番女にモテているという具合だ。

そんな三者三様で“等身大”の彼らが、生きることの喜びや悲しみ、苦しみを体現する。そして、視聴者は彼らの誰かに自分を重ね合わせる。友情、恋、就職、社会のしがらみ、モラトリアム…。視聴者は彼らに憧れ、共感し、ときに反発し、激しく感情を揺さぶられた末、ドラマの世界にどんどん前のめりになっていく。演じる役者たちは“それぞれが好演”などという言葉では片付けられないほどキャラクターと同化している。それゆえ「俺たちの旅」は、カースケ・オメダ・グズ六という“3人の人生”を私たちの心に完璧に構築し、放送から30年経った今も脳裏に鮮明に焼き付いているのだ。

3人を取り巻く人物たちの描写も印象深い。オメダがたまたま覗いてしまった更衣室での洋子(金沢碧)の着替え姿(これは当時の男子に衝撃を与えたトラウマ的名シーン!)。三浪のワカメ(森川正太)が東大の合格発表で自分の名前を見つけた(間違いなんだけどさ…)ときの顔面崩壊。オメダの妹で女子高生の真弓(岡田奈々)が、ほのかな恋心を抱くカースケを想い、時折見せる悲しげな表情(バックに流れる岡田奈々のヒット曲「青春の坂道」は、ドラマ用に歌詞を変えている手の込みよう)…。

毎回、エンディングに流れる散文詩も忘れがたい。「カースケはカースケのままで グズ六はグズ六のままで オメダはオメダのままで 男の人生はそれでいいのだ」。こうして本編は幕を閉じた―—。

「水戸黄門」や「熱中時代」といった視聴率40%超えのドラマが放送されていた当時、「俺たちの旅」は驚異的な視聴率を取ったわけではないが、主人公たちの10年後、20年後、30年後を描いたスペシャル版がほぼ10年間隔で放送される奇跡を起こす。言わば、“記録以上に記憶に残るドラマ”だったのだ。スペシャル版ではカースケが会社社長に転身するなど、予想外の展開が続出! 当時の思い出と共に人生の現実を突きつけられ、自分の人生や成長と重ね合わせ、そしてまたしても前のめりに…。今回は、このスペシャル版3作から放送。初見の方はまずその世界観に浸かって、時間を遡る形で12月スタートの本編第1話に向かうのも一興だ。

ちなみに、本作は中村が歌う主題歌をはじめ、小椋佳の楽曲が全編を彩るが、スペシャル版では別のアーティストの名曲が多く使われている。「~二十年目の選択」のBGMには、権利関係の都合上、パッケージ化の際にインストゥルメンタルに変更された「あの日にかえりたい」(荒井由実 現・松任谷由実)と「さよならだけは言わないで」(五輪真弓)がオリジナルのまま放送される。“俺旅オタク”には願ってもない朗報である。

舟木雅(編集者・ライター)

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