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2014年3月23日(日)

《ぴあ×チャンネルNECO》強力コラボ 【やっぱりNECOが好き!】 第30弾~第39弾

2014.3.23

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第39弾!!
あの名曲の誕生秘話!

●昭和30年代の空気をパッケージした懐かしの歌謡映画

大阪の老舗百貨店・そごうデパートが、東京有楽町駅前に進出したのは昭和32('57)年5月のこと。そごう宣伝部は有楽町エリアのイメージをアップさせるため、「有楽町で逢いましょう」を合言葉にTV、雑誌、歌謡曲、映画とのタイアップ作戦を展開した。前年公開されたMGM映画『ラスヴェガスで逢いましょう』にあやかってのキャッチフレーズ。メディアミックスという言葉が生まれるはるか前のことだ。

日本テレビでは、そごう提供による歌番組「有楽町で逢いましょう」がオンエアされ、雑誌「平凡」では同名小説が連載された。そして、昭和32年11月、ビクターから作曲・吉田正、作詞・佐伯孝夫、歌・フランク永井による歌謡曲「有楽町で逢いましょう」がリリース、たちまちヒットを記録した。そのキャンペーンの仕上げとして作られたのが、昭和33年1月15日に封切られた本作だ。

すなわちこれは、単なるヒット歌謡の映画化ではなく、“コマーシャル時代”と呼ばれた昭和30年代ならではの“有楽町そごう”とのタイアップ映画でもあった。冒頭、フランク永井が螺旋階段で主題歌を歌うショットは、ハリウッドのミュージカル映画を意識したもの。このころの大映はドイツのアグファ・カラー・フィルムを採用しており、その赤味がかった色彩は昭和30年代の晴れがましさを感じさせてくれる。

さて、京マチ子扮するヒロインは、東京~大阪間を行ったり来たりの売れっ子ファッション・デザイナーで、そごうデパートにブティックを出店している。その弟・川口浩は大学のフットボール部員。京マチ子のお相手は、時の花形職業でもあった建築家(菅原謙次)で、その妹の女子大生(野添ひとみ)は川口浩と恋に落ちる。脚本は、3年後に東宝で加山雄三の『大学の若大将』を手がける笠原良三だけに、いま見ると『若大将』シリーズっぽい要素に溢れている。

ちなみに、物わかりのいいモダンなおばあちゃん・北林谷栄は、このとき47歳! 大阪のシーンに登場する浪花千栄子のおかしさ、女子大の寮母・岸輝子のユニークさと、3人のベテラン女優が脇を固めている。

お楽しみは、なんといっても昭和30年代前半の有楽町界隈の風景をはじめとする、懐かしの東京風俗。現在はビックカメラ有楽町店となっている、かつて有楽町そごう2階にあったティールームなど、主題歌の歌詞に合わせたビジュアルもいい。今月は『ALWAYS 三丁目の夕日』のシリーズ3作一挙放送に合わせ、『有楽町で逢いましょう』を筆頭に昭和30年代の歌謡映画が特集されるが、『アンコ椿は恋の花』『嵐を呼ぶ男』『情熱の花』『南国土佐を後にして』など、いずれも時代の空気がパッケージされた佳品に仕上がっている。

佐藤利明(娯楽映画研究家)

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2014.2.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第38弾!!
主役も脇も固められるスゴい彼の必見作!

●ケヴィン・スペイシー主演の中国映画は劇場未公開の必見作だ!

今年もアカデミー賞の季節になりましたが、過去に主演男優賞と助演男優賞をW受賞した男優を知ってますか? 86回を数えるオスカー史上わずか6名。ジャック・ニコルソン、ジャック・レモン、ジーン・ハックマン、ロバート・デ・ニーロ、デンゼル・ワシントン、そしてもう一人が、“アメリカの小日向文世”ことケヴィン・スペイシーだ。『ユージュアル・サスペクツ』で第68回アカデミー賞助演男優賞を、『アメリカン・ビューティー』で第72回アカデミー賞主演男優賞を受賞した、主役も脇も固められるスゴい人なんですねえ。

とはいえ、シリアスな作品にしか出演しないなんて野暮なことはおっしゃらず、アメコミ映画『スーパーマン リターンズ』では、W受賞の先輩ジーン・ハックマンがかつて演じた悪役レックス・ルーサーを完コピで演じて観客を驚かせたほど。スペイシーは近年、プロデューサーとしても活躍しており、『ソーシャル・ネットワーク』『キャプテン・フィリップス』にクレジットされていたのを覚えている人もいるだろう。そんな彼が、なぜか中国映画をプロデュースして主役まで演じたのが、今回放送される『ジャスト・ア・ヒーロー』だ。

自殺寸前の主人公ダニエル・ウーをスペイシーが助け、彼の持つ正義感を素直に発揮してはどうかと提案。二人で謎のヒーロー(ミシンでコスチュームを作ります)に変身し、夜な夜な悪事を暴くために街へ繰り出す…というのが前半のストーリー。「なんだ、『キック・アス』や『スーパー!』と同じ素人ヒーロー映画でしょ?」と思ったそこのアナタ! 本作はアナタにこそ観てほしい作品なのです。

なんと、後半ではスペイシーが実在しないことが明らかに! それが何を意味するかは観てもらうしかないが、ヒントは本作の英題 “INSEPARABLE”(親友、離れがたいもの)にある。『ファイト・クラブ』を思わせる現代に生きる人間の病巣にまで踏み入る予測不能の物語は、ハリウッドではまず実現不可能な企画。スペイシーがノリノリで中国映画に参加したのも納得の展開が待っている。『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』が話題の今、劇場未公開の超貴重作を見て周りに自慢してやろう!

モルモット吉田(映画ライター)

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2014.1.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第37弾!!
キャスティングとアンサンブルの妙に感心したわ!

●長谷川博己さんに恋する女性に共感しちゃうわ~!

以前、長谷川博己さんに取材したとき、現れた瞬間にドキっとさせられたのよね。「立ち居振る舞いがキレイ。あらやだ、なにあの手! ピアニスト!?」と、編集者に言ってしまったくらい。「それ、まんま『セカンドバージン』のるいです」と言われたもんでしたわ。

そう、『セカンドバージン』は、俳優・長谷川博己をスターダムに押し上げた作品。仕事一筋で恋を休んでン十年のアラフォー女のるいが、泥沼の不倫愛に目覚めてしまう17歳年下の相手・行を演じたの。実際に、るいの台詞にも「手がきれい」というのがあるんだけど、手だけじゃないのよ! 背筋がシャンと伸びて、私服もおしゃれ。劇中“金融王子”と呼ばれる行のように、素顔にも王子様っぽさがあるもんだから、ピッタリのハマり役。そりゃ「こんな年下男がいたら…」と、るいに共感する女性が妄想を抱くのもムリないわ。

でも、この作品の素晴らしいところは、長谷川さん一人じゃないの。なんせキャスティングとそのアンサンブルがいい!

るいを演じる鈴木京香しかり、行の妻・万理江を演じる深田恭子しかり。彼女たちが、これまでのイメージを覆す役柄に挑戦したことがポイントね。るいは気丈な女ボスだけど、それは表向きの仮面。結婚に失敗して痛手を負い、仕事に打ち込むことで恋から逃げていたというのが本当のところ。「弱みを見せては女がすたる」とばかり、気丈なボスを演じきって成功していたのに、行が現れたことでそれがガラガラ崩れていくのね。これまでの鈴木さんって“完璧女”のイメージだったから、遅れてきた“中二病”のアラフォー女性役も、表向きの仮面状態に説得力があるのよ~。おかげで、ヘナヘナと行に溺れていく対比も抜群。

そこに絡む万理江のスゴみったらないの。最初こそ「何も知らないお嬢さん若妻」だった万理江が、るいの勧めからペットシッターを始め、自立心を芽生えさせてからはまるで人が変わったよう。やがては自分の意のままにならない夫・行を破滅に追いやるという…この残酷さったらない! 劇場版の終盤で登場する万理江の強さを観たら、「ひぇ~、女ってコワイ!」って思うから! この二面性を、能面のような表情で演じた深田恭子のポテンシャルには驚かされたわ。お可愛いだけじゃなかったのね、深キョン…。

このドラマって、女優たちがこうした意外性を見せたおかげで、長谷川くんも際立ち、アンサンブルがハーモニーを奏でたと思うのよね。NHKギリギリの挑戦、と呼ばれたこのドラマ。劇場版でキレイに完結する作りになっているので、一挙放送で観られるのはいい機会よ~。

よしひろまさみち(オネェ系映画ライター)

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2013.12.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第36弾!!
懐かしの大ヒットシリーズについて語る!!

●懐かしのキョンシー跳びでハッピー・ニューイヤー!

80年代半ば、日本で爆発的なキョンシー・ブームが起きた。30歳以上の男子なら、両手をまっすぐ水平に伸ばして、ピョンピョン跳びはねた記憶もあるのでは? 学校で「前へならえ!」の号令がかかったときに、待ってましたとばかりに跳ぶ奴が続出したのもこのころの出来事。近年も関連作が作られているが、ブームの発端となった『霊幻道士』シリーズ3作がチャンネルNECOに登場する(ちなみに、キョンシーなる言葉を考案したのは日本の配給会社)。

第1作は、誤った埋葬方法で成仏できずにいる死者が甦り、退治にくる道士と戦いを繰り広げるアクションホラー・コメディー。第2作はガラリと路線変更して、キョンシーの子どもが登場。この“ベビ・キョン”が実にカワイイのだ。人間の子どもと仲良くなって一緒に街へ遊びに行くシーンなんて、『E.T.』より愛嬌がある。3作目は19世紀末を舞台にスプラッター要素ありと、毎回まったく異なる展開ながら、恐怖もアクションも笑いも盛り込んでしまえるのがキョンシー映画の魅力なのだ。

ところで、本シリーズに影響を与えた日本映画がある。中川信夫監督の和製ホラーの傑作『東海道四谷怪談』がそれ。お岩さんとキョンシーさんは海を挟んでいるので一見関係なさそうだが、『東海道四谷怪談』の撮影を担当した西本正は後に香港へ渡り、香港映画の黎明期を支えて名カメラマンと呼ばれるようになった。『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』を撮ったのもこの人。『霊幻道士』シリーズの監督リッキー・リュウはカメラマン出身で、その師匠が実は西本なのだ。

撮影助手を務めていたころから怪談映画が好きで、『東海道四谷怪談』にも惚れ込んでいたというリュウだけに、『霊幻道士』にはどことなく日本のホラー映画の味わいを感じることができる。特に、女幽霊のシャンシーが激怒すると、顔の半面が崩れて男に襲いかかるというのは、まさにお岩さんだ。

ちなみに、本シリーズの製作総指揮は、俳優、武術指導者、監督、製作者と、八面六臂の活躍を見せるサモ・ハン・キンポー。俳優として顔を出してくれなかったのは残念だったが、満を持して『霊幻道士3 キョンシーの七不思議』に特別出演。瞬時にその場面をさらってしまう印象的な登場なので、ぜひお見逃しなく!

最後に、キョンシー対策をお伝えしておこう。お札、火、剣、鏡、五寸釘などが必要らしいが、普段は手元にないものばかり。ただ、餅米には噛まれたときに解毒作用があるらしい。正月に『霊幻道士』シリーズを見るなら、念のために餅を食べながらがモア・ベターだ。

モルモット吉田(映画ライター)

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2013.11.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第35弾!!
超異色ヒーロー映画について語る!!

●爆笑と感動がてんこ盛りの超異色ヒーロー映画

バットマン、ウォッチメン、スパイダーマン、最近では「キック・アス」シリーズもそうだが、昔から「異形のヒーロー(&ヒロイン)はマスク着用」がお約束。覆面と奇抜なコスチュームは彼らのアイデンティティなんである。無論、世の中に正体がバレないようにする効用と、ビジュアル的にキャラ立ちさせる意味合いも持っていて、特にアメリカン・コミックではおなじみのフォーマットだ。

ところがここ日本に、そんなアメコミの猛者たちを凌駕したトンでもない格好のヒーローがいるのをご存知だろうか? なんと…パンティを被って悪と闘う高校生・色丞狂介、またの名を変態仮面! 原作は'92~'93年まで「週刊少年ジャンプ」誌で連載された「究極!!変態仮面」(作・あんど慶周)で、これがまさかの、奇跡の、実写映画化を果たしたのだ。

熱血刑事の父とSM嬢の母の間に生まれた狂介はある日、変装して銀行強盗を倒そうとし、間違えて女性用のパンティを被ってしまう。すると、父と母から受け継いだDNAによって変態の血が覚醒。その潜在能力が引き出され…って、こうやってキーボードで文字を打ちながらも、あまりのバカバカしさに唖然としてくる(笑)。が、本作は日本でヒットしただけでなく台湾、香港といったアジア圏のほか、ニューヨーク、スイス、スペインなど10近くの映画祭からオファーが殺到。北米プレミア上映を果たしたニューヨーク・アジア映画祭では、アメコミの本場で観客賞を受賞したのだった。

同じクラスの転校生でひと目惚れした美少女(清水富美加)の窮地を救うため、「フオオオオオッ!!」と雄叫びを上げつつ変身! 衣服を脱ぎ捨て、足には網タイツ、さらにブーメランパンツの両脇を伸ばして交差させ、肩に通すという爆笑スタイル、ヘンタイ秘技でさまざまな敵に挑む我らが変態仮面。最強の相手はニセ変態仮面(安田顕←怪演)である。

監督はTV『勇者ヨシヒコ』シリーズや『コドモ警察』、映画『俺はまだ本気出してないだけ』の福田雄一で、曰く「とんだ衣装と設定ではありますけれども、ご家族で楽しめる健全さでお送りしています」とのこと(笑)。原作漫画の大ファン、小栗旬が“脚本協力”として参加しており、主演はその小栗君が「彼以外には考えられない」と推した盟友・鈴木亮平が担当。苦労して造り上げた筋肉美、ド迫力の生身のアクションのみならず、ヒーローならではの悩める心情描写の部分でも魅せてくれる。

「正義」とは、「変態」とは何かと悩み、思春期特有のコンプレックスと相対する少年の心。それは一種のヒーロー論にもなっており、観る者を感動までさせちゃうのだ。登場すれば悪人に笑われ、助けた人には逃げられる。それでもパンティを被ることをやめない色丞狂介——。ある意味、変態仮面こそヒーローの“マスク”について最も考えさせるキャラクターかもしれない。

轟夕起夫(映画評論家)

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2013.11.1

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第34弾!!
戦国もののヒットは主演俳優の肺活量で決まる?!

●“肺活量の魔術師”野村萬斎が魅せるスペクタクル時代劇

長年、時代劇を観続けて、私が発見したことのひとつに「肺活量の多い俳優が主演した戦国ものはヒットする」というのがある。つまり、腹の底から声も出せない役者が「かかれっ!!」と号令をかける戦国武将を演じても、面白くもなんともないということ。映画『影武者』の仲代達矢、『戦国自衛隊』の夏八木勲、大河ドラマ『徳川家康』の滝田栄、『独眼竜政宗』の渡辺謙…タイトルを聞いただけで、頭の中に彼らの大音声が響いてきそうだ。

その意味で、『のぼうの城』の野村萬斎は大当たりだった。

舞台は、天下統一を目前にした豊臣秀吉が、最後の敵と見なした北条勢の支城のひとつ「忍城(おしじょう)」。その城を預かるのは、地元の農民たちにもでくのぼう=“のぼう様”と親しまれる成田長親(萬斎)だった。忍城を水攻めで落とすために乗り込んだ石田三成(上地雄輔)率いる豊臣軍2万に対して、長親はたった500人の兵で戦いを挑む。

「もみつぶす」「とっとと降伏しろ」と上から目線の豊臣軍の使者に対して、「戦いまする」と言い出す長親。「正気か!?」と、同輩の武将たち(佐藤浩市、山口智充、成宮寛貴)もたまげるが、力のある者がない者を虐げる世の習いを「わしは許さん」と宣言する長親に、全員が戦いを誓う。

クライマックスでは、長親が歌い踊る「田楽踊り」が重要な役割を果たす。コミカルで、ちょっとエッチで、お茶目な踊りは、狂言師・野村萬斎だからこそ実現できたもの。それは重々承知しているが、私はむしろ、巧みに己の肺活量を操る萬斎の底力に心底感動した。

自分と意見が合わない相手には「カーッ!!」、猫が威嚇するような息をぶつけ、武器を持って駆けつけた民に対しては「戦(いくさ)にしてしもうた。みんなごめん~」と絶叫する。その一方で、豊臣の使者には「坂東武者の槍の味、存分に味わわれよ」と不敵な笑みを浮かべ、赤子まで手にかけた敵には「わしは決めた、水攻めを破る」と怒りに震えるのだ。

大声を出さなくても、長親の言葉は、人の心を打つ。ホトトギスが鳴くまで待てない信長をはじめ、秀吉、家康といったおなじみの面々とは全く違う、ニュータイプの戦国武士と言える。その人間味あふれる魅力は、来年の大河ドラマ『軍師官兵衛』の黒田官兵衛と、どこか通じる気もする。

いずれにしても、“肺活量の魔術師”萬斎、恐るべし。いつまでも記憶に残る作品だと思う。

ペリー荻野(コラムニスト)

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2013.9.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第33弾!!
子どもたちの夢を映画で叶えた!

●ブルートレイン全盛期の勇姿に感動!

いやもう、感動した。子どもたちの間でブルートレインが大ブームを巻き起こした1980年代。日本最長距離列車として一時代を築いた寝台特急「はやぶさ」の勇姿を、2013年の今、これほどじっくりと見られるなんて!

夜空の下を駆け抜け、寝ている間に見知らぬ街へ連れて行ってくれる寝台特急。青く美しい客車を使っていたことからブルートレインと呼ばれ、子どもたちの憧れの的だった。毎日夕方になると、小中学生がその姿をひと目見ようと東京駅に集まり、長崎・佐世保行き「さくら」、博多行き「あさかぜ」など、次々と発車していくブルートレインにカメラを向けたものだ。しかし、多くの小中学生にとって寝台列車は高嶺の花。そこで、子どもたちの夢を映画の形で叶えてあげようとしたのがこの作品だ。

ブルートレインファンのたけし(上野郁己)は、親に内緒でひとり寝台特急「はやぶさ」に乗ってしまった。車内で出会う、さまざまな人たち――おしゃべり好きのお婆ちゃん、サングラスをかけた謎の男、ギャング風の3人組、やはりひとり旅らしい少女あずさ、家出少年のマー坊。一方、父親の隆介(川津祐介)は、新幹線に乗ってたけしを追いかける。果たして、小学生の冒険の結末は?

児童映画として学校や公民館などを巡回したこの映画は、ソフト化もされていない幻の作品だ。当時の国鉄が全面協力し、東京~西鹿児島(現・鹿児島中央)間1,515.3kmを約22時間で走破した寝台特急「はやぶさ」を、車両基地を出る場面から余すところなく映し出している。運転士の操作、機関車の交換、食堂車や車内販売の風景、駅を行き交う国鉄時代の名列車など、鉄道ファンなら一瞬たりとも目を離せない映像の連続。父・隆介がどうやって「はやぶさ」に追いつくのか、あるいは追いつけないのかという時刻表ミステリーの要素もあり、単なる児童映画には留まらない魅力を秘めている。ファンでない方でも、懐かしく甘酸っぱい気持ちに浸れるはずだ。

中には、小学生がひとりでブルートレインに乗るなんて、あり得ないと思われる方もいらっしゃるかもしれない。だが当時、小学生のひとり旅は決して珍しくなかった。実は筆者もそのひとり。小学2年生のころから必死でお小遣いを貯金し、小学6年生の夏休み、初めてひとりで寝台特急「あさかぜ」に乗った。もちろん、親公認だ。山手線一周などの近場から練習を重ね、前もって決めた乗換駅で必ず家に電話を入れる。そうした約束を4年間守り続け、ついに叶えた“ブルートレインひとり旅”。「はやぶさ」車内で目を輝かすたけしは、30年前の自分の姿でもあった。子どもの冒険を許す懐の深さが社会にあった1980年代。本作品は、そうした昭和という時代の魅力もたっぷりと味わえる。

今月は【鉄道に魅せられた男たち】と題し、三浦友和が地方鉄道の運転士に扮した『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』、武田鉄矢が鉄道カメラマンを演じる『ヨーロッパ特急』も放送する。併せて鉄道の魅力に浸ってほしい。

栗原景(フォトライター)

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2013.8.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第32弾!!
原田芳雄のアウトロー時代劇

●アウトローな股旅もので原田芳雄が見せる“絶体絶命の戦いぶり”

かつて、国定忠次、清水次郎長を祖型とする“股旅やくざ映画”は、邦画時代劇の中で一大ジャンルを形成していた。このジャンルから、伊藤大輔監督『忠次旅日記』シリーズ、稲垣浩監督『瞼の母』、マキノ雅弘監督『次郎長三国志』、山下耕作監督『関の弥太っぺ』という日本映画屈指の名作が誕生した。

時代劇が“消滅”した1970年代以降、このジャンルを復活させたのが『股旅』の市川崑監督だった。自己資金で『股旅』の製作に取り組んでいた彼は、その前段としてテレビ時代劇『木枯し紋次郎』を監督し、時代劇の新たな地平を切り拓いたのだ。

さて、“股旅やくざ映画”の変形ともいえる『座頭市物語』は、子母澤寛のエッセイ集「ふところ手帖」の数ページの一篇から生まれたという逸話はよく知られている。1962年、その「座頭市物語」の映画化の企画段階で監督に指名されたのは、池広一夫だった。しかし、市川崑が大映で監督した『炎上』『ぼんち』の助監督だった彼は、『座頭市物語』の監督を切望しつつも会社命令で市川の新作『破戒』のスタッフに編入されてしまう。

それから10年、いわば大映では師弟関係にあった市川崑と池広一夫は、1971年から72年にかけて、共に笹沢左保の原作による股旅小説の映像化で脚光を浴びる。それが前述の『木枯し紋次郎』と、今月放送される『無宿人御子神の丈吉』だ。

『無宿人御子神の丈吉』は、1作目の『牙は引き裂いた』、2作目の『川風に過去は流れた』、3作目の『黄昏に閃光が飛んだ』の計3本が作られた。いずれも池広一夫監督、原田芳雄主演で、1&2作目には『木枯し紋次郎』の中村敦夫が準主役で出演。3作目では原田と俳優座養成所の同期生だった故夏八木勲(5月11日歿)が共演しており、敵味方に分かれながらも奇妙な友情で結ばれる様は今見ると実に感慨深い。

『木枯し紋次郎』の紋次郎と『無宿人御子神の丈吉』の丈吉は、いわばコインの裏と表、ともに故郷喪失者の一卵性双生児だ。前者は“無関心”を、後者は“憎悪”を武器に世渡りするしかない、屈折した渡世人であるところも共通している。

白い着物に殺された女房の赤いシゴキを腰に巻き、仇の国定忠次を捜し求めて行脚する丈吉の殺法は、座頭市と同じ逆手切り。だが、座頭市のような抜刀居合術の心得はないらしく、力任せのブッタ斬りと、突きしかない野良犬喧嘩流儀だ。その“絶体絶命の戦いぶり”は、原田の映画デビュー3作目の『反逆のメロディー』における長髪とサングラス、ジーンズの上下姿の若きアウトローを彷彿とさせる。

ところで、『無宿人御子神の丈吉』が公開された1972年は、連合赤軍によるあさま山荘事件、川端康成ガス自殺事件が記憶される年だ。この年、若者たちは井上陽水の「傘がない」やガロの「学生街の喫茶店」を口ずさみつつ、紋次郎と丈吉に拍手を送っていたのだ。

植草信和(元キネマ旬報編集長)

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2013.7.22

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第31弾!!
ジェット・リーが演じたアクション絵巻

●中国の英雄をジェット・リーが演じたアクション絵巻

ブルース・リーの師匠イップ・マン(葉問)を主人公にした映画『イップ・マン』シリーズや『グランド・マスター』の公開で、クンフーブーム再来の兆しあり! そのイップ・マンをぐんと上回り中華圏で愛されているのが、本作の主人公・黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)だ。

黄飛鴻(1847~1924)は実在した武術家にして漢方医で、清朝末期の混乱期に中華民族に誇りを与えた国民的ヒーロー。それを証明するかのように、彼を主人公にした映画は80本以上も作られ、同一の題材で製作された映画の本数としては世界一!(ギネスも認めてます) 90年代初頭の香港映画界で、そんな黄飛鴻役を十八番にしたのが今やハリウッドスターとなったジェット・リーなのだ。凛とした佇まい、親しみやすい人柄、そして何よりも強靭で俊敏かつ華麗なアクション(もちろんスタント・CGなし)。“ワンチャイ”シリーズには、ジェット・リーにしか出しえない魅力が凝縮されている。

ツイ・ハーク監督によるフィクションを交えた時代の描き込みも非常に巧みで、ユン・ピョウが弟子フー役で登場する1作目『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』では、欧米列強国に押される母国を憂慮する黄飛鴻の姿がしっかりと描きこまれ、以降の作品に繋げている。

アクション場面では、シリーズ中最も人気が高い2作目『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』に注目。この作品では、“イップ・マン”でおなじみドニー・イェンとジェット・リーの夢の対決が実現! 武術指導監督を『マトリックス』『グランド・マスター』のユエン・ウーピンが務めており、ドニー扮する提督が繰り出す布棒術と、黄飛鴻の得意技“無影脚”の死闘は今なおファンの間で名シーンとして語り継がれている。

3作目『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇』は、黄飛鴻が獅子舞の名手だったことを基にして展開するストーリー。足技の名手・鬼脚(熊欣欣〈ション・シンシン〉が好演)と黄飛鴻の対決に目を見張り、敵の情けを知る鬼脚と寶芝林(黄飛鴻の道場兼診療所)の面々との交流に思わず涙・涙!

さらに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアン・モンキー』では、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇』に登場した黄飛鴻の父親・黄麒英(ウォン・ケイイン)が主役に。麒英役のドニー・イェンは、もはや“芸術”といえるアクションを繰り出す一方、この父にしてこの子ありと納得する清廉な父親像を演じるドラマパートでも魅せてくれる。

中国の至宝・黄飛鴻の生き様、そしてジェット・リーやドニー・イェンの超絶アクション。その素晴らしさを“ワンチャイ”でたっぷりと味わってほしい。

地池寧子(映画ライター)

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2013.6.20

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第30弾!!
恐るべし!ハングマンの“お仕置き”

●悪を懲らしめるお仕置きがキテレツすぎる!

謎の人物ゴッド(山村聰)により召集された、警察組織からはみ出した元刑事たち。彼らは、莫大な報酬と引き換えに殉職という形で指紋も戸籍も抹消され、“ハングマン”として現代の巨悪に立ち向かう。 創設メンバーは、ブラック(林隆三)、マイト(黒沢年男、現・年雄)、ベニー(あべ静江)、ドラゴン(ディオン・ラム)、パン(植木等)、バイク(加瀬慎一)の6人だ。

このドラマの面白さは、なんと言っても「殺しは厳禁。あくまで悪人たちの社会的抹殺を図る」というハングマンの掟である。こんな掟が、『必殺』シリーズの名プロデューサー・山内久司によるドラマで出てきたことは実に興味深い。なんたって、「必殺」は毎回、驚くべき方法で殺しを実行していたわけで、『ザ・ハングマン 燃える事件簿』はその真逆を行くのだ。私はこのドラマが始まったとき(1980年)から、“何かある”と予感した。

予感は当たった。タイトルは第1話「七つの黒バラ」、第2話「その命五千万」とハードタッチだったのが、回を重ねるごとに「エンゼルキッスは豚の味」「KO強盗をKOせよ」「熱血スッポン刑事」と、どんどん異色ムードに。ハングマンの最終目的である「悪人の社会的抹殺」も、“目隠しした悪人たちの前にニセモノの爆弾を置いて、衆人の前で罪を告白させる”といったものだったのが、次第に水中逆さ吊り、爆発サイクリング、クイズ(!?)電気ショック、吸血処刑など、キテレツ路線にシフト。そのお仕置きのすさまじさは、最近、「マツコ&有吉の怒り新党」でも取り上げられたほどだが、悪人を箱に閉じ込めてイリュージョンマジック、悪人の全身に山芋を塗るなどなど、肝心の本筋を忘れさせるほど過激になっていった。

さらに私のもうひとつのお楽しみは、ハングマンたちのコードネーム。名前が神島泰三だからゴッド、香港出身だからドラゴンというのはまだしも(後にヌンチャクというキャラも登場)、黒い車に乗ってるからブラック、妻子がパン屋だからパン、黒沢年男は革ジャンの下にダイナマイトを巻き付けているからマイトって…。ちなみに、続編『ザ・ハングマン4』に登場した元ボクサーの佐藤浩市はクレイ、『新ハングマン』に登場した元傭兵の名高達郎(現・達男)はE.Tですから(佐藤、名高にはシリーズ違いで別名バージョンもあり)。

事件の概要はスライドで説明、盗聴録音はでっかいテープ、固定電話にはレースのカバー。こんなアナログな時代だからこそ、ハングマンは任務を遂行できたんだなと、今になってつくづく思う。SNSなんてなくて良かったんだ!よくわからないけど、こんな面白いシリーズが続いたことに感謝したい。いまさらだけど、ありがとう!

ペリー荻野(コラムニスト)

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