岳不群（がく・ふぐん）は五岳併合の野望を抱き、「辟邪剣譜」を手に入れるために数々の策を弄したのではないか――任盈盈（じん・えいえい）の推測を打ち消しはしたものの、令狐冲（れいこ･ちゅう）の胸には一抹の不安が残った。
一方、藍鳳凰（らん・ほうおう）と左冷禅（さ・れいぜん）は、岳不群と任我行（じん・がこう）打倒のために手を結び…。

岳霊珊（がく・れいさん）を人質に取り、「辟邪剣譜」を要求する余滄海（よ･そうかい）。しかし、林平之（りん・へいし）は「岳不群（がく・ふぐん）の回し者など勝手に殺せ」と言い放つのだった。
同じ頃、令狐冲（れいこ･ちゅう）と儀琳（ぎりん）そっくりに変装した任盈盈（じん・えいえい）は、華山派の本営に岳不群を訪ねていた…。

労徳諾（ろう・とくだく）に不意を突かれた令狐冲（れいこ･ちゅう）の背に、林平之（りん・へいし）の掌による一撃が。冲は驚き、目を見張る。
平之と岳霊珊（がく・れいさん）を救うために駆けつけたのに、当の平之が襲いかかってきたのだ。剣を抜き、なおも攻めたてる平之。その時、劣勢となった冲を守ろうと飛び出した霊珊の胸に、平之の剣が…。

霊珊（れいさん）は寂しがり屋だから、１人にしておくことはできない――そうつぶやくと、寧中則（ねい・ちゅうそく）は自らの人生に幕を引いた。愛弟子・令狐冲（れいこ･ちゅう）の腕の中で、華山の女侠は静かに息を引き取った。
同じ頃、岳不群（がく・ふぐん）率いる正派の群雄と日月神教の一団は、黒木崖の吊り橋を挟んでにらみ合っていた…。

岳不群（がく・ふぐん）の野心を知り、煩悶する令狐冲（れいこ･ちゅう）。そんな彼の前に、仮面姿の任我行（じん・がこう）が。
辟邪剣法を習得した岳不群と拮抗する力を手にすることが、江湖の平和につながると説き、独孤九剣を伝授してほしいと迫る我行。冲はその求めに一度は応じたものの、相手が我行に成りすました偽者であると気づき…。

辟邪剣法を習得した左冷禅（さ・れいぜん）らと共に、林平之（りん・へいし）は華山へと攻め寄せた。しかし、そこに岳不群（がく・ふぐん）の姿はなかった。
彼は五岳派の弟子たちを思過崖の洞穴へと連れてゆき、五岳剣法を学ばせようとしていたのだ。やがて、令狐冲（れいこ･ちゅう）と任盈盈（じん・えいえい）も思過崖にたどり着き…。

岳不群（がく・ふぐん）の弔いを終えたばかりの令狐冲（れいこ･ちゅう）は、東方不敗（とうほうふはい）が日月神教の新たな教主の座に就いたことを知る。
東方不敗は力で五岳派をねじ伏せ、江湖の頂点に君臨しようと考えている――そう悟った令狐冲（れいこ･ちゅう）は、野望を阻止するため、任盈盈（じん・えいえい）と共に黒木崖へと急ぐ…。【完結】