コラム

まとめ

 芸能生活55周年を3年後に控えた2014年という年は、暮れに70歳を迎えた舟木一夫にとって実に収穫の多い1年だった。何よりも大きいのは、2年前に変えた発声法が奏功し、舟木自身がここ数年で最も良い"声の響き"になっていると納得できたことだ。それがお芝居にも、ステージでのトーク、普段の会話にもいい影響を及ぼして"新たな自信"につながっている。新しいアルバム作りへも意欲的で、2015年はまだまだやり残しているものへの"チャレンジの年"になるだろう。


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■歌うのが急に楽しくなってきた!!■

舟木は常々、「いつまでもデビュー当時のような若い声を保つのが大切ではなく、その時々の、年を重ねた歌声の"良い響き"をお客さんに届けることが最も重要なこと」と話していて、そのために2年に1回ぐらいのペースで発声法を変えている。今回も2年ほど前に発声法を変えたが、半年ほどたって自身で好感触を持ち始め、1年後から納得できる声になり、今では上手く歌わなければならないといった義務感のようなものから開放され、「歌うのが急に楽しくなってきた」という。70歳にして「歌うのが楽しくなった」というのは、まだまだ走り続けるぞという舟木の強い意思表示でもある。

■初めて見る(!?)"自然体の舟木一夫"■

 約1か月の座長公演、コンサートなどの際に舟木の楽屋を訪ねる機会がしばしばあるが、50周年前後のノリノリの時期であるはずのつい数年前、表情から笑顔が消えて元気がなかったり、ものすごく疲れているんじゃないかと思わせることが何回となくあった。それが最近は実に伸び伸びとしていて、スタッフらと話す会話もはずみ、"自然体の舟木一夫"を感じるようになっていた。こんなに気楽で明るい舟木を見るのは初めてかもしれないと思うことすらあった。最近になって「歌が楽しくなってきた」という話を聞き、肩に背負っていたものがなくなってきたんだと納得できた。

■芸人魂を持った"芸人・舟木一夫"■

今年はインタビューやステージなどで語る舟木の発言を聞いて改めて感じたことがある。お客さんを楽しませる、お客さんを喜ばせることに徹する人のことを本物の「芸人」と呼ぶとすれば、舟木一夫こそが芸人魂を持った「芸人」だということだ。舟木は歌手として、役者として一流のものを身に着けたうえで、常にどうすればお客さんに喜んでもらえるか、楽しんでもらえるかを考えている。徹底した"お客さま目線"なのだ。「芸人」という太い幹から「歌手」や「役者」という枝が出ているという絵が浮かんでくる。単なるお笑いタレントをお笑い芸人と呼ぶのとはワケが違うのだ。

■常に意識している「お客さまと舟木」■

舟木の発言にはいつも「お客さま」がある。数年先の「お客さま」と「舟木一夫」の立ち位置を念頭に置き、その1年前、その2年前、その3年前には何をやるべきかを自ら考えている。これだけ「お客さま」を強く意識している歌手や役者が他にいるだろうか。若くして様々なジャンルの歌を歌いこなし、大人顔負けの時代劇を演じ切っていたことを振り返ると、子供の頃に育った生活環境、家庭環境が舟木の中に自然に"芸人魂"を作っていったのだと思う。そして本格的に「芸人・舟木一夫」の力量を発揮し出すのは、舟木が同世代の「お客さま」だけを向いて歌い、演じ始めてからのような気がする。

■喜ばれ楽しまれるコンサートとは...■

1年間を通しての通常コンサート、年に数回行う大劇場でのシアターコンサート、座長公演でのコンサート、時にはG3KやBIG3といったコンサートなど、毎年様々な形態のコンサートをこなしているが、和モノでやるか洋モノでやるか、オープニングは何にするか、「高校三年生」はどこに入れるか、「日本の名曲たち」では何を選ぶか、めったに歌えない歌をどう挟み込むか...。50年以上歌っていても、同じ構成のものはない。その時々に"お客さん目線"に立って考えているからだ。そうして考えに考え抜いて決めた構成も、実際のステージでのお客さんの反応次第で順番を変えることもある。とにかく徹底している。

■55周年に向けての目標は「現状維持」■

そんな"お客さま目線"に立って考えると、55周年に向けての舟木の最大の目標は「現状維持」ということになる。"今"が最高のコンディションだから、3年後にはとにかく"今"と同じ声質で歌い、"今"と同じくらいの量のステージをこなすことだ。すでに2015年は2月=大阪・新歌舞伎座、12月=東京・新橋演舞場の座長公演が決まっており、4月から通常コンサートがスタートする。舟木は言う。「なぁんだ現状維持かなんて言ったらだめだよ。27歳から30歳までの3年間とは全く違うんだから。70歳の現状を3年後も維持し続けるということは大変なこと。すごく高いハードルなんですよ」と。

■いかにまとまらないで終われるか...■

舟木がいつも語っていることだが、「月刊歌の手帖」(マガジンランド)1月号の6ページの大特集「青春は眠らない 舟木一夫」の中でより明確に話していることがあるので、引用させていただく。「もちろん、新しくやりたい事もあるよ。やり残した事もゼロではない。だけど、残り時間の中で、ちゃんと消費できるものでないといけない。中途半端で終わってしまいたくない。そう考えると、今一番大切なのは"いかに舟木一夫らしく終われるか?"という事。それは具体的にどういう事かと言うと"いかにまとまらないで終われるか"という事じゃないかな(笑)」。

■"お客さまの包容力"が幅を広げる■

舟木は最近、"お客さまの包容力"ということをよく言う。"いかにまとまらないで終われるか"にもつながるもので、上手いとか下手とかいうものを通り越して、とにかく舟木がステージに立って生の声で歌っていればそれでいいじゃないか―というものを感じるという。だから、舟木の持ち歌に関しても「お客さんだってちょっと聞き飽きた歌があるんじゃないの」というくらいのスタンスで行けば、どうしても歌わなければならない歌をもう少し絞りこめて、より幅広い選曲ができるのではないかというのだ。これぞまさしく、お客さんと舟木との阿吽の呼吸というものだろう。

■アルバム制作に意欲■

55周年に向けての最大の目標は「現状維持」だが、あくまでも今の声質で同じような量のステージをこなすことで、最低限の目標と言った方がいいかもしれない。というのも、12月26日の東京・新橋演舞場での2014年最後のコンサートのパンフレット用インタビューで語ってくれたことで詳細をお伝えできないが、55周年に向けてアルバム制作を考えていることを明かしてくれた。70歳にしてこの意欲は、敬服に値する。

■自ら示した娯楽時代劇の新たな可能性■

お芝居に関しても"進化"し続けている舟木一夫を強く印象付けた。とりわけ新橋演舞場での座長公演「―天一坊秘聞―八百万石に挑む男」の大成功は、役者・舟木一夫を一段高いステージに登らせるとともに、滅びつつあると言われる娯楽時代劇の可能性を自ら示して見せることになった。「役者・舟木一夫」のコラムでも書いたように、舟木の中にはいくつかのタイプの娯楽時代劇があり、それぞれに具体的に舞台にかけたいと考えている演目がある。その中から各劇場に合ったものを選択しているわけで、55周年までには少なくとも6、7本の新作の娯楽時代劇が楽しめそうだ。

■商業演劇界に"喝"を入れる役割も!!■

ところで、映画から本格的な時代劇が消えたのは1970年半ば。テレビの台頭で各映画会社も銀幕からブラウン管にシフトしてテレビ時代劇が活況を呈したが、80年代半ばに若いタレントにスポットライトが当たり始めると各局とも時代劇を減らしていった。NHK大河ドラマ「独眼竜正宗」の大ヒットで一時は持ち直したものの、2011年末にTBS系の「水戸黄門」が終了すると同時に地上波から時代劇のレギュラー枠が消滅してしまった。舞台になると、その衰退ぶりは一層顕著になる。その意味でも、役者・舟木と舟木組の頑張りは商業演劇界に"喝"を入れることにもなっている。

■ファイナルコンサートが1月に放送■

舟木は毎年、通常コンサートの締めくくりとして12月に東京・中野サンプラザホールでファイナルコンサートを行っている。2014年も14日(日)の昼夜に開催したが、2014年は西郷輝彦、三田明とのBIG3で全国を回った関係で舟木単独の通常コンサートは数回しか開いていない。その意味では、例年以上に貴重なファイナルコンサートとなったわけだが、その模様が2015年1月27日(火)の「フナキの日」のチャンネルNECOで早速放送されると聞いている。これは見逃せない。最もいいコンディションにある舟木一夫の"声の響き"を堪能していただきたい―。

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最終回
まとめ
役者(後篇)
役者(前篇)
BIG3(後編)
BIG3(前篇)
新曲(後篇)
新曲(前篇)
はじめに