コラム

BIG3(前篇)

 舟木一夫の今年のコンサートの目玉の一つが「青春歌謡 BIG3 2014」。BIG3とは、いうまでもなく舟木、西郷輝彦、三田明の3人のことだ。4月4日の神奈川・川崎市教育文化会館を皮切りに、12月20、21日の大阪・新歌舞伎座まで計50か所で100公演を行っている。どの会場も同世代の男女のお客さんが埋め尽くし、ステージも客席も青春時代にタイムスリップしたかのような熱気に包まれている。今回のコラムでは、それぞれの会場の雰囲気を中心にお伝えしよう。


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■孫までいるんだから、いい加減にしなさい!!■
 
私が足を運んだのは4月17日に千葉県文化会館で行われたコンサートの昼の部。5月31日に東京・新橋演舞場で行われるシアターコンサートのパンフレット用原稿を"補強"するためでもあった。会場は3人とほぼ同世代のお客さんで文字通りの超満員。男性客がこんなに沢山見えているとは予想外だった。もっとも、この年になると平日(この日は木曜日)も日曜日も祝日も関係ないか。何十年ぶりかで"憧れの青春スター"に会いに来た方も少なくなかったんじゃないでしょうか。お隣の女性たちは会話の内容から、誘い合って来たそんな久しぶり組の様子。夫婦と思われる男女で座っているお客さんの姿も目立った。
大ホールは1階から3階まで約1800席。開幕前の舟木はいつものように1階中央あたりの客席に座ってステージから会場全体を見渡し、演奏しているバンド、照明担当らスタッフに細かい指示を出す。いつも見慣れた光景だが、「3人だと気楽でいいですね」という私の問いかけに、舟木は「一人でやる時より3人のほうが気を使うんですよ」。よく見ていると、おっしゃる通りBIG3のリーダーとして気配りが随所にあった。音合わせではこのBIG3コンサートで初披露する新曲「眠らない青春」を中心に、水前寺清子の「涙を抱いた渡り鳥」など持ち歌以外の歌を念入りに行っていた。
 午後2時半、いよいよ開幕。ザワザワしていた会場がシーン。演奏とともに緞帳がゆっくり上がると、ステージ下手から三田、舟木、西郷が揃って姿を見せた。客席から割れんばかりの大きな拍手と懐かしい黄色い歓声が飛ぶ。フォーマルな黒のタキシードで登場した舟木はいきなり「三田明です」なんて冗句を飛ばし、3人の中でただ一人孫がいる西郷をネタに「おじいさんというより、じっちゃまだね」。会場が十分和んだところで、三田、西郷、舟木の順にトークをはさみながらヒット曲から新曲までそれぞれ10曲前後を歌い、合間には3人で昭和の名曲数曲も披露した。
 三田からは「舟木さんがデビューしていなかったら私はいなかった」という裏話も披露されたが、これについてはこのコラムの後編で私が三田に行った長時間インタビューも踏まえて詳しくお伝えしたいと思っている。続いて登場した西郷。足を上げたり激しく踊ったり...と昔と変わらない動き(!?)で歌う姿に"輝ちゃ~んコール"が飛び交うと、もう最高潮。しかし、年は隠せない。歌い終えてハーハーという感じの西郷のところに舟木が携帯用の酸素ボンベを持って現れ、「いいかげんにしなさいよ。孫までいるんだから。少しは年を考えなさいよ」。これには客席の大爆笑を誘っていた。

■オレが歌い始めると、お客さんがトイレへ!?■
 
BIG3のリーダーとして、舟木は西郷、三田とともに客席のお客さんへの気配り=サービスも忘れない。西郷の歌に続いて「皆の衆」(村田英雄⇒全員)、「恋のバカンス」(ザ・ピーナッツ⇒西郷)、「ウナセラディ東京」(ザ・ピーナッツほか⇒三田)、「東京の灯よいつまでも」(新川二郎⇒舟木)、「霧子のタンゴ」(フランク永井⇒三田)、「ああ上野駅」(井沢八郎⇒西郷)など3人のデビュー当時の名曲を歌った後、舟木の番になるのだが、ここで軽妙な冗句が飛ぶ。「三田くん30分、輝さんが30分、ここで12、3分でしょ。オレが歌い始めるとお客さまがトイレに行き始めるんだよなぁ」
 舟木の最初の歌は「君へ心こめて」。本名・上田成幸の名前でお客さんへの想いを込めて自ら作詞・作曲した歌だ。続いて「初恋」、「絶唱」の抒情歌を歌い終わると、「先ほど5人ほど(トイレに)そっと行かれたんですが、まだお帰りでない方がいらっしゃるので気になって...」と笑わせる。そして、ギアチェンジして「現役の間じゅう歌える歌と出合えたのは幸せです」と真面目に話し、アカペラで「あ~か~い~ゆう~ひが~」と歌いかけると、客席のあちこちから「に~れ~のこかげに~」と続く。通常コンサートでも時々行っているが、西郷、三田ファンも一緒になって口ずさんでいる。実に感動的な光景だった。
 改めて「高校三年生」、そして「学園広場」を続けて歌い、バラード調にアレンジしたスローテンポの「高原のお嬢さん」に移っていく。客席をしっとりさせたところへ舟木の口笛が会場いっぱいに鳴り響き、「哀愁の夜」へと入っていく。この歌は和泉雅子と撮った映画の情景も浮かんでくる舟木ファン一押しの名曲。この後、新しいアレンジで6月18日に日本コロムビアからリリースした新曲「眠らない青春」が続き、お馴染みの「銭形平次」で締めくくった。
 舟木はお客さんへのサービスとともに、西郷、三田へのサービス=気配りもしっかり行っている。西郷の故郷・鹿児島の宝山ホールで4月24日に開催したBIG3コンサートでは、三田、西郷、舟木といういつもの順番を変えて、三田、舟木と続き、西郷にトリを譲った。三田の出身地である東京・八王子のオリンパスホール八王子(6月5日)の際は、三田がトリを務めている。先輩・舟木といえども、やはり"地元"の西郷、三田ファンには勝てない。オリンパスホール八王子の楽屋での3人のちぐはぐな"打ち合わせ"は「舟木一夫オン・ザ・ロード2014」でも放映されているので、是非ご確認を。

■50年を経て理解しあえた"気の合う仲間たち"■
 
実は3人の全国コンサートツアーは今回が初めてではない。最初は2010年4月23日に愛知県芸術劇場で行っている。「青春歌謡 BIG3 スペシャルコンサート」と銘打って全国ツアーを行ったのは2011年。当初は3月12日の千葉県文化会館からスタートする予定だったが、直前の11日に東日本大震災が発生したため、3月26日の静岡市民文化会館からスタートを切ることになった。各会場では被災者のための募金活動も合せて行い、11月28日の大宮ソニックシティまで計40公演を行った。いずれの会場も大盛況で、ファンからは再開催の要望が殺到していた。
 最終コンサートの後のブログで三田が「やっと3人が打ち解けたぐらいに終わっちゃうんだよね」と心残りの感想を記していたように、3人も約50年ぶりに長いステージを共にして初めて"気の合う仲間たち"を実感した様子で、すでに再度やろうという暗黙の約束は出来ていた。それから約2年半。3人のファンの熱い期待に応える形で開催が決まったわけだが、前回と違って今回は最初から3人の息がピッタリという状態でスタートを切ることになり、事前の記者会見、テレビ朝日「徹子の部屋」、ミニコミ紙・読売ファミリーのインタビューなども和気あいあいの空気に包まれていた。
 まず記者会見でのそれぞれの話をご紹介しよう。デビュー当時は「NHK紅白歌合戦」はじめ年末年始の特番、司会・玉置宏の「ロッテ歌のアルバム」、「明星」や「平凡」などの芸能雑誌の対談ぐらいしか3人が揃うことがなかった。舟木が「当時はお互い負けたくないと思ってやっていました」と言えば、三田も「それを周りがあおっていましたから。レコード会社同士もライバル意識が強かったんです」。それから50年。舟木は「それぞれの歩幅で歩いてきて、肩の力が抜けたところで、今は一緒に出来る。同じ時代に青春を過ごしたことが、時間が経ってみるといとおしく感じます」と話した。
 6月4日号の読売ファミリーでは、西郷が「僕らがデビューしたころは子供からお年寄りまでが同じ歌を共有していた時代で、今とは"歌への思い入れ"が全然違う。それに当時は1年間に何百人もの新人がデビューし、その中でしのぎを削って生きていた。その緊張感が50年たって解けてきた。だから、今のこのステージがどれだけ楽しいか」と話すと、三田が「いろんな事情で僕たち3人が口もきけない時代があって、ファン同士いがみ合うなんてこともありました。それが今、皆さんが当時のことを仲良く語り合ったりする。これは嬉しいです」と応じている。そんな空気間の中でBIG3が展開されているのだ。

■合わせて203歳のおそらく最後の"狂宴"■
 
BIG3コンサートのために作ったパンフレットがある。3人のコンサートに寄せる想いと、3人を応援する女優、プロデューサー&演出家、タレントからのメッセージが綴られている。舟木によると、舟木選手とアキちゃん(三田)、輝サンとはわずか8か月の間にデビューした「同期の桜」。もっとも、近頃は花なんぞすっかり散っちゃって「動悸の枯木」。「枯木も山のにぎわい」というから、最後の競演(つーよりも狂宴だな)をのんびりとお楽しみを...。応援者は和泉雅子で、「明るいだけでチャランポランの私と、まじめな姿勢で作品に取り組む舟木クンのコンビが多くの名作を生んだと思っています」。なるほど。
 これに比べて西郷は「嬉しく、はしゃぎたい気持ちを押さえることが出来ません。お互い、まだステージにバリアフリーは必要ないようです。最高のステージでファンの皆様にご恩返し出来たらと思います」と、いたって真面目。応援は石井ふく子さん。意外にも平成19年に明治座で行われた創始者・三田政吉の追善公演「忠臣蔵」が出会いだという。2人で作り上げたのは、今までにない堀部安兵衛。「私は寡黙で男っぽい西郷さんに惚れこんだ。西郷さんというすてきな仲間が加わって、また一つ、私に宝石が増えて、嬉しい出会いとなりました」。西郷らしい。
 三田は「楽しいこと、悲しいこと、愛し愛されたこと。そして人との別れも今ではみんな思い出の1ページ。懐かしい歌や新しい歌を通して思い出を語り合おうではありませんか」と、こちらも真面目。応援はモノマネの清水アキラ。生まれてはじめて両親に連れて行ってもらったのが三田明ショーだった。しかも清水らしいのが「何よりも楽しかったのがものまねコーナーでした」。そういえば、三田は「象印スターものまね大合戦」の常連だった。阪神大震災の時に結成した"絆の会"の12人にも誘われ、交流が続いているという。いかにも三田らしいエピソードだ。
 合せて203歳。こんな3人のBIG3コンサートも残すは、12月9日の埼玉・大宮ソニックシティ、20日と21日の大阪・新歌舞伎座のみになった―。

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最終回
まとめ
役者(後篇)
役者(前篇)
BIG3(後編)
BIG3(前篇)
新曲(後篇)
新曲(前篇)
はじめに