コラム

はじめに



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 

"いま"を走り続ける舟木一夫を追う特集の核となるオリジナル番組『舟木一夫 オン・ザ・ロード2014~眠らない青春、再び~』(4回)。 この4本の放送に合わせ、放送テーマに沿ったコラムを大倉明さんに連載していただきます。 執筆にあたり、すでに走り続けている舟木さんの活動について、その様子を大倉さんの視点で序章という形で連載を開始いたします。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 

序章

歌手・舟木一夫(69)=本名・上田成幸=が
日本コロムビアから「高校三年生/水色のひと」で
デビューしたのは1963(昭和38)年6月5日。
18歳だったアイドルも、この6月5日で52年目に入り、
12月12日には70歳の古稀を迎える。

今年は工夫を凝らした大劇場でのシアターコンサート、
西郷輝彦(67)、三田明(66)と展開するBIG3コンサート、
そして9月から始まる1か月座長公演......と、大車輪の1年だ。

永遠の青春スターの当面の目標は
「芸能生活55周年」で、
自らに様々な負荷を掛けながらひた走っている。



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



■絶好調宣言~同世代との旅■

 舟木は「52年目に入ったんですね。12月で70歳ですか。こんな齢まで歌を歌えるとは思ってもみませんでした。70歳になって『高校三年生』を歌っているとはね。ここ2、3年は声が細くなるかなぁと思っていたんですが、昨年、発声方法を変えてから上手くいっているんです」と"只今絶好調"を宣言している。また、流行歌について「流行歌が素晴らしいのは、同世代に向けて歌うと1本のコーラに2本のストローを差し込んで飲んでいるように感じるところ。流行歌というのは95%が昭和に生まれて、昭和で終わったといっていいと思う。今になって、つくづく流行歌手になってよかったと思っている」と、改めて"同世代との旅"を続けていく価値を強調してみせた。


■ディナーショーで幕明け■

 そんな歌手・舟木一夫の2014年は、大阪・リーガロイヤルホテル(1月19日)と東京・八芳園(22日)で開催されたバースデイ・ディナーショーで幕を開け、24日に東京・オリンパスホール八王子で行われたNHKBS日本の歌「昭和の歌人たち・西條八十」(3月2日放送)の収録へと繋がっていった。 本来はディナーショーを毎年12月12日の舟木の誕生日前後に開き、同じ12月に通常コンサートのファイナルを東京・中野サンプラザホールで開催しているが、昨年は12月に大阪・新歌舞伎座で1か月の座長公演(3日~22日)が行われたため、ファイナルコンサートを11月6日に繰り上げ、ディナーショーを年明けに延ばすことになった経緯がある。今回のディナーショーでは「青春ドロボーイ」「風のワルツ」「「立ち話」など計 11曲を熱唱。歌いながら各テーブルを周ってお客さん1人1人と握手を交わし、ショーが終わったら20人ずつくらいに分かれて撮影会を行った。ディナーショーに参加できなかったファンも、舟友さんたちのブログでショーの様子を知ることが出来るのが嬉しい。


■船村徹のギターに感激、涙■

「昭和の歌人たち・西條八十」の収録に際して、舟木自身がある人に言われて改めて認識したことがある。日本コロムビアの先輩のお千代姉さんこと島倉千代子が昨年11月8日に75歳で亡くなった後、西條八十作詞の作品を持ち歌として現役で歌っているのは自分だけになったということだった。ますます大切に歌っていかないといけないと思った。 番組ではそんな西條作詞の持ち歌の中から「花咲く乙女たち」(遠藤実作曲)、「夕笛」(船村徹作曲)、「絶唱」(市川昭介作曲)の3曲を歌うことになり、舟木のほうから番組スタッフに「可能ならば船村先生のギターで『夕笛』を歌いたい」と依頼したところ、船村は81歳という高齢にもかかわらず、二つ返事で「喜んでやりましょう」と答えたという。「夕笛」は1967(昭和42)年8月に発売され、船村自身もステージで歌うお気に入りの曲。舟木が"寒い時代"を過ごしていた時、船村から「舟木君、歌をやめるんだって。僕が君のために作った『夕笛』は誰が歌ってくれるんだい」という電話があり、目を覚ますきっかけにもなった。50周年を無事に終え、どうしても船村のギターで歌いたかったのだ。 実は、船村は私のインタビューの中で「舟木君の50周年記念曲は僕が作ってもいいから、伝えておいてよ」と話すほど、ずっと舟木のことを気遣っていた。番組は3月2日に放送された。ギターは船村と斉藤功の共演だったが、歌い終えた舟木はさすがに感極まったという感じで、目には今にもこぼれ落ちそうな涙を浮かべていた。


■骨格固まる「日本の名曲たち」■

 今年の通常コンサート「舟木一夫コンサート2014」のスタートは、2月6日の埼玉・大宮ソニックシティホール。と言っても、今年は9月からの1か月公演と西郷輝彦、三田明とのBIG3コンサートがあって、ソロ・コンサートはこれを含めて3日間しかない。オープニングの「立ち話」からアンコールの「君よ振りむくな」まで計21曲を歌った。 コンサートの中で、舟木は「日本の名曲たち」についての話をした。「長くこの業界にいさせていただいていることと、お客さまへの御礼の気持ちも込めて、小学校5、6年生ごろから聞き始めた名曲といわれる流行歌と『荒城の月』などの古典を選曲して歌っていこうと思っています」。ここでは古典として「宵待草」と「ゴンドラの唄」を披露した。 神奈川・相模女子大グリーンホールでの今年2回目の通常コンサート(3月12日)でも「日本の名曲たち」に触れ、「僕自身がリアルタイムで間に合っていない、例えば田端義夫さんの『かえり船』なんかよりは後の時代の、"舟木一夫が歌うとその時の風が吹く"という歌を歌うのでないとお客さまに届かないと思う」と、骨格をより明確に話した。


■新曲「眠らない青春/恋人形」■

 舟木はこのステージで初めて新曲の話題を口に出し、「このあいだレコーディングをしてきました。毎度申し上げているように、ステージに乗せてあまり役に立たない、その曲一曲だけ置いても戦力にならないような新曲を出すのはやめようと思っていて...」と話した後、「どんな新曲なのかはナイショ...」と言って客席の笑いを取っていた。 「明日咲くつぼみに/浮世まかせ」(2012年1月発売)以来、約2年半ぶりになる新曲の「眠らない青春/恋人形」は6月18日、日本コロムビアから発売された。いずれも舟木が"寒い時代"の中にいた1970年代半ばごろに舟木自身が作詞したもので、3月3日に都内のスタジオで新たにレコーディングした。 なぜ今、いわゆる新曲を作らず、数多くある過去の歌の中からこの2曲を選んで「新曲」にしたのかなど、舟木ならではの歌へのこだわり、ステージへの熱い思い入れがある。舟木の真髄でもある詳細はこのシリーズの別の機会に改めて書きたいと思っているので、ご期待ください。


■圧巻の「遠藤実スペシャル」■

 「日本の名曲たち」としては、京都・南座(2月22日~23日)、名古屋・中日劇場(3月28日~29日)、大阪・新歌舞伎座(5月2日~4日)、東京・新橋演舞場(5月31日)で行われたシアターコンサートの第二部の「遠藤実スペシャル~決して散らない花々」が秀逸で、観客席のあちこちから「舟木一夫は本当に上手い」という声が聞かれたステージだった。 ここで披露したのは「十字路」「くちなしの花」「すきま風」「からたち日記」「星影のワルツ」「若いふたり」「天竜母恋い笠」「旅鴉」「他人船」「みちずれ」「夢追い酒」「ギター仁義」「ソーラン渡り鳥」「北国の春」。とりわけ「ギター仁義」や「ソーラン渡り鳥」の歌唱では、バンドのメンバーさえも「舟木さんは年々声が出てくる」と驚くほどだ。 舟木の歌の上手さの秘訣については、別のところで"解説"したいと思っている。いずれにしても、舟木は「このようなスペシャル企画が皆様に受け入れていただけるなら、ステージの構成として新しい大きなスタイルがひとつ増える可能性がある」と語り、55周年、あるいはそれ以後に向けて確実に何かを掴んだという手ごたえを感じたのではないか。


■舟木、西郷、三田=BIG3■

 歌手・舟木一夫としての2014年は、4月4日の神奈川・川崎市教育文化会館を皮切りに、西郷輝彦、三田明とともに全国50会場(100公演)で展開している「青春歌謡 BIG3 スペシャルコンサート」の年でもある。各会場には3人3様のお客さんが付いていて、熱気にあふれている。会社務めを完全リタイアした団塊の世代の男性客の姿も目に付く。 通常は、三田、西郷、舟木の順に登場するが、会場によっては順番を入れ替えたり、アドリブを乱発したりで、3人がやんちゃぶりを発揮して面白がってやっている。しかも、3人の持ち歌だけでなく、1963年から64年にかけて流行した他の歌手の歌も披露しているため、お客さんも古き良き昭和の青春時代にタイムスリップしている感じだ。 合せて202歳という"同期の桜"のそれぞれへのインタビューを通じて私が聞いた舟木に対する西郷、三田の思い、舟木の2人への心遣いのほか、山あり谷ありのそれぞれの生き様、各地でのコンサートの模様など、BIG3についての詳細は改めて書くことにしたい。請う、ご期待を―。


■半年に3回もの1か月公演■

 今年のもう一つの目玉は、ますます円熟味を増している俳優&役者・舟木一夫の座長公演。9月の東京・新橋演舞場、10月から11月の名古屋・中日劇場、来年2月の大阪・新歌舞伎座と、半年の間に3回の1か月公演を行う。中でも注目されているのが新橋演舞場の「天一坊秘聞―八百万石に挑む男」。舟木の真骨頂が発揮される演目だ。 私とのインタビューで、舟木は「10年ほど前に、50周年に辿り着いて続けられるならこういう演目もありだねと言っていた1本。僕がやる伊賀之亮が天一坊になぜあそこまで入れ込む動機を僕なりに見つけることが出来たので、やってみようと思ったんです。映画にはなっていますが、舞台化は初めて。大詰めに凝りますからお楽しみに」と話している。 舟木少年と時代劇との出合い、長谷川一夫、大川橋蔵らから学んだこと、これまでに演じてきた芝居、これからの娯楽時代劇にかける意欲、数々の演目で共演してきた葉山葉子や長谷川稀世らの舟木評、相手役の歌舞伎役者・尾上松也についてなど、「俳優&役者・舟木一夫」についての詳細も改めて紹介することにする。

バックナンバー

最終回
まとめ
役者(後篇)
役者(前篇)
BIG3(後編)
BIG3(前篇)
新曲(後篇)
新曲(前篇)
はじめに