コラム

最終回

 70歳を迎えた舟木一夫の2015年は、2月1日から20日まで大阪・新歌舞伎座で行われる舟木一夫特別公演(一部「~おとぼけ侍奮闘記~花の風来坊」、二部「シアターコンサート」)でスタートする。BIG3コンサートと2本の座長公演が中心だった昨年とは違い、今年はこの新歌舞伎座と12月の東京・新橋演舞場の座長公演の間が長く、その間に通常コンサート、シアターコンサートなど、歌手・舟木一夫を満喫できる1年になりそうだ。コラム最終回では、今月27日にチャンネルNECOで放送される昨年12月のファイナルコンサート2014の"解説"も含めて、舟木一夫にまつわるあれこれをお届けしたい―。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
■与一さん、キヨちゃん、ハコちゃんの舟木評■

舟木にインタビューをする機会があったので、チャンネルNECOの「舟木一夫オン・ザ・ロード2014」に登場した林与一、長谷川稀世のコメントについての感想を聞いてみた。それぞれの発言を復習しておくと、林は「あの方は脇役は出来ない。僕たちが支えて神輿として担いでいたい人で、座長として光っていてほしい。本業は歌手だけど、これだけ時代劇を愛して出来る方はいない」。また、長谷川は「発想が面白い。どうしてここでこういうことが考えられるのかということが一杯ある。そばにいて一つの作品を一緒に作り上げて行きたい人」と話していた。舟木にはこのほか、私が以前に葉山葉子にインタビューした際の舟木像も加えて聞いた。葉山は「時代劇にものすごくお詳しくて、カツラや衣裳、小道具のことなども本当によくご存じ。こういう時はどういう衣裳かと相談すると、ちゃんと答えて下さるので助かっているんです」と語っていた。林、長谷川、葉山の3人は2月の新歌舞伎座公演でも共演することになっており、このコラムを読んで舞台をご覧になると、一層楽しめるのではないかと思う。舟木の"回答"は次のようなものだった。

■3人は僕より深く広く時代劇を知っている方々■

与一さん、キヨちゃん、ハコちゃんは時代劇のオーソリティー。大きな時代劇、わざと切り口を小さくした時代劇など、何十年の間にありとあらゆるものを見聞きし、ご自分でも積み重ねて来られたわけで、時代劇に関しては酸いも甘いもかぎ分けて何でもご存じなんです。ですから、この3人に対しては、僕よりも時代劇を深く広く知っている方々なんだということを前提に物事を考えているんです。だから3人がいてくれれば、稽古場でも自由自在に動いても大丈夫だよって言って芝居を作っていくことが出来るんですね。座長、主役という立場で僕が一番大切にしているのは、最後にお芝居全部をさらう、と言うとおかしいかな、僕らは持って行くという言葉を使うんだけど、脇の人が一番言うのは「最終的に主役が持って行ってくれないと、脇がなんのために芝居しているのか分かんないんだよね」ということなんです。そういう意味で、歌舞伎ではない、大衆演劇でもない、僕らがやっている中間演劇と言われるものは、脇の人が固めに固めてやってきたお神輿に最後に主役が乗って締めるということになるんです。いかにも舟木らしい"回答"だった。

■早くも12月のファイナルコンサートが放送■

ところで、今月27日(21時~)の「フナキの日」と31日(12時30分~)の2回、昨年12月14日に東京・中野サンプラザホールで昼夜にわたって行われた舟木の「舟木一夫コンサート2014ファイナル」の完全収録版がチャンネルNECOで放送される。昨年は新橋演舞場、中日劇場での座長公演のほかは西郷輝彦、三田明とのBIG3コンサートが中心だったため、舟木単独の通常コンサートが3回しか開かれなかった。それだけに通常コンサートの締めくくりとしてのコンサート2014ファイナルは貴重なコンサートになる。それがわずか1か月余り後に見られるというのは、会場に出向けなかった舟木ファンにとっては絶対に見逃せない放送だ。また、折角の機会なので、最近の舟木一夫をあまり知らないが、是非見てみたいというかつての舟木ファンを含めた視聴者のために、このコンサートの"解説"を付けてみたいと思っている。解説に当たっては、春日局さんのブログ「れんげ草の咲くさんぽ径~舟木一夫の世界」や、さすらいさんのブログ「武蔵野舟木組」などを参考にさせてもらった。

■オープニングは"寒い時代"の「想い出通り」■

コンサート2014ファイナルは直前の12月12日に誕生日を迎えた舟木にとって、70歳最初のコンサートになるという意味合いもあって、全席指定にもかかわらず寒風の中、昼夜ともいつもより早めに会場前にファンの長い列が出来ていたのが印象的だった。2000席以上の会場は全国からかけつけた舟木ファンで文字通りの満席。開演を告げるベルが鳴り終わり幕が上がると、舟木は柿色のジャケット(襟は黒サテン)、黒のベストとパンツ、モノトーンのポケットチーフ姿で登場。オープニングは「想い出通り」(それまでの3回は「立ち話」)で、昨年6月にリリースされた新曲「眠らない青春」と同じく、1976(昭和51)年8月に発売されたオリジナルアルバム「レマンのほとり」に収録されている1曲だ。オシャレでアップテンポな「想い出通り」は、別のコンサートでもたびたび歌っている。10数年続く"寒い時代"に入りかけた30歳か31歳のころに誕生した作品の一つとして、この歌には舟木自身特別の感慨を持っているようだ。

■ステージのトークにも余裕...客席の笑い誘う■

「とうとう70になりました。70になったからって別にどうってことないんですが、68だ69だと言われていましたから、やっとこれですっきりしました」と絶妙な挨拶トークの後、「東京は恋する」「ブルートランペット」「くちなしのバラード」「花咲く乙女たち」「友を送る歌」と続く。この間、マイクを左手に持って歌いながら腰をかがめて花束・プレゼントを受け取るスタイルは相変わらずで、受け取った後はステージに設けられた花束、プレゼント用の台に一つ一つ丁寧に置いていく。花束は客席にそれぞれの花が見えるように置いていくため、渡したお客さんにとって嬉しいばかりでなくステージも客席も華やぐ。トークタイムでは、ついに舟木一夫が日本コロムビアの最年長歌手になったと話し、「こういうコンサートも一日一回ということにしないと...。でも、心配することもないんです。お客さまのほうもくたびれてくる。まぁのんびりいきましょう」と笑わせる。最近、この年齢になって歌うのが急に楽しくなってきたという余裕もあって、トークもごく自然体で絶好調という感じだ。

■画期的なアルバムとなった組曲「その人は昔」■

続いて「その人は昔」のテーマ。"こころのステレオ"と銘打って1966(昭和41)年11月に発売されたアルバム「その人は昔~東京の空の下で~」は、レコードから生まれた音楽劇(ミュージカル)といった感じのもので、舟木にとっても歌謡界にとってもエポックメーキング的なLPレコードとなった。全編作詞は高峰秀子の夫でもあった映画監督の松山善三、やはり全編作曲は船村徹。船村は当時、「舟木君は私が作曲したバラエティーに富んだ歌に、ひたむきに取り組みベストを尽くしてくれた。出来上がりは私が期待した以上で、LPレコードとしては画期的なヒットになった。3か月の労作で疲れたが、快い疲労だった」と記している。「その人は昔」は連続ドラマ「氷点」でヒロインを演じた内藤洋子を舟木の相手役に抜擢して映画化(東京映画、7月1日公開)され大ヒット。映画ではアルバムになかった6曲も加えられ、内藤が初めて歌った船村作曲の「白馬のルンナ」などもヒットして話題になった。舟木は7月7日から東京サンケイホールでも、宝塚歌劇団・雪組の大原ますみを相手役にメモリアルコンサート「その人は昔」を上演している。

■現役のうちに通しの「その人は昔」を実現へ!? ■

歌い終えた舟木は「60歳ぐらいから、現役のうちに1回、『その人は昔』を通しで...と思ったりしたんですが、お相手の女性もいりますし、第一、私がもつのかどうか。来年は船村徹スペシャルをやらせていただきたいと思っています」と話し、客席から"応援"の拍手が響いた。私は現役のうちに「その人は昔」を通しでやりたいと言った舟木の言葉をまんざらでもなさそうだと受け止め、後日、本人に直接聞いてみた。舟木からは即座に「トークで言っているだけの話であって無理ですよ」という答えが返ってきた。私が「お客さんは強く望んでおられますから、どこかで3日間だけでもやっていただけたら...」とさらに畳み掛けると、「15、6分のものなら何とかなるかもしれないけれど、組曲全体をやるとなると難しいでしょう」という回答だった。私はお客さんがさらに強く望めば絶対無理という感じではなさそうだと直感したが、さてどうなりますか。船村徹スペシャルについても合せて聞いてみたが、これは2月の新歌舞伎座公演の初日に具体的な日程や曲目などが発表されるかもしれないので、お楽しみに。

■いい作品に恵まれてさらに"長い旅"が続く■

この後、「北国の街」「哀愁の夜」「高原のお嬢さん」と、和泉雅子と共演した日活映画の主題歌が続き、新曲「眠らない青春」へ。「日本の名曲たち」に入る前に黒のジャケットに着替えて、日本の名曲「宵待草」「ゴンドラの唄」を歌って舟木自作の40周年記念曲「浮世まかせ」に。ラストは50周年記念曲「明日咲くつぼみに」から、青春歌謡、学園ソングと呼ばれて当時の社会現象にまでなった「あゝ青春の胸の血は」「君たちがいて僕がいた」「高校三年生」「学園広場」に繋ぐ。トークでは「こうやって歌っていると本当にいい作品に恵まれた歌い手だなぁと...皆さんと長い旅をご一緒するには作品の量と質が揃っていればこそ。僕自身が、皆さんが、時代を背負(しょ)っているわけですからね、頑張って下さい」と語りかけ、舟木抒情歌の代表曲「初恋」「夕笛」。くるりと後ろ向きになってアカペラの「吉野木挽唄」から「絶唱」に繋げて締めくくった。アンコールの「君よ振りむくな」で客席がスタンディングになり、サインボールタイム。まもなく、天井から白いハート型のメッセージ入りカードがゆっくりと客席に降り注いだ―。

約半年間にわたりお付き合い下さり、有難うございました。

バックナンバー

最終回
まとめ
役者(後篇)
役者(前篇)
BIG3(後編)
BIG3(前篇)
新曲(後篇)
新曲(前篇)
はじめに