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2023年10月6日(金)

三ヶ月連続企画“もう一度見たい”日本映画【10月】『下妻物語』/『嫌われ松子の一生』

9月、10月、11月の三ヶ月連続で、「もう一度見たい日本映画」と題して、映画・チャンネルNECOで放送する番組の中から様々な日本映画を「何故、今見てほしいのか」という視点からご紹介していきます。今回取り上げる映画は、2004年公開『下妻物語』と2006年公開『嫌われ松子の一生』

下妻物語

宣伝マンが見た『下妻物語』
好きなものがあることは当たり前か。ロリータから学ぶ“好き”との楽な向き合い方

編成マンが選ぶオススメポイントBest3

番組情報(作品概要、放送日時)


嫌われ松子の一生

宣伝マンが見た『嫌われ松子の一生』
正しい愛とは。今、“無償の愛”を肯定する意味

編成マンが選ぶオススメポイントBest3

番組情報(作品概要、放送日時)

 



2004年公開『下妻物語』。その奇抜な演出と独特のファッションで世界中の映画祭を賑わせた本作。今、もう一度見てほしい理由とは?


 “好き”とは何か。「好きなことで、生きていく」という考えが世に広まり、多くの若者を中心に自分らしく自由に生きていこうとする風潮が見られるようになった。しかし、結局のところ、“好き”とは何か。その見つけ方が不明なまま、「誰もが自分の好きを追い求めて生きていくことができる」という前提だけが独り歩きしている。そして、そんな世の中に漠然と生きづらさを覚えることがある。本作の主人公・桃子は、自分自身の“好き”をたった一人で追究している。そんな彼女の自己完結的な生き方は、現代に生きにくさを覚える人々に、“好き”との向き合い方を教えてくれる。


 茨城県下妻市。桃子はロリータファッション好きの女子高生。田舎町で一際目立つその服装と、本人の個人主義的かつ理論的な性格により、彼女に友人と呼べる者は一人もいなかった。そんな桃子だったが、ある出来事をきっかけに地元のレディースの一員であるイチゴと出会う。正反対かに見えた二人だったが、共に過ごす時間の中で、互いの感情に変化が起こっていく。


 桃子はロココの精神に従って生きている。ロココとは、18世紀後半のフランスで流行した優美で贅沢な美術様式。その「気持ち良ければオッケー」の精神に従って、桃子は自由に生活をしている。ロココの精神を徹底すること以外に興味がないため、他人とは関わる必要などないと考えている。
 一方、イチゴは恩義の精神を重んじている。口癖は「借りは返す」で、いじめられっ子だった自分に声をかけ、レディースの一員として迎え入れてくれた亜樹美を尊敬している。
 二人はまるで正反対だ。桃子は一人で、イチゴは仲間たちと日々を過ごしている。しかし、二人は徐々に互いの考え方に惹かれ合っていく。桃子はこれまで、人間は一人で生きていくからこそ自立できると考えていた。しかし、イチゴの他人を思いやる気持ちに触れ、徐々に自分の弱さを見せるようになる。一方のイチゴは、弱かった自分を変えるためにレディースに入り仲間とバイクを乗り回していたが、一人でも哲学を持って自分を貫く桃子の姿に感銘を受け、一人でバイクを走らせるようになる。


 「好きなことで、生きていく」とは「好きなことで、お金を稼ぐ」ということだ。では、果たしてどれほどの人が仕事にするほど熱中できるものを見つけられているのか。実際のところ、自分が本当に好きなものなど自分ではなかなか分からないもの。しかし、夢中になれるものを見つけるべきだという世の中の圧を無意識に感じてしまう。
 思うに、我々はどうしても“好き”を買い被りがちなのだ。すぐに「好きを仕事にする」「好きは人生を豊かにする」と考えてしまうため、好きに対するハードルが高くなってしまう。そして、好きなものがない自分と好きなものに夢中な誰かを比較してしまう。
 しかし、桃子は違う。桃子は「ロリータで生きていこう」とは思っていない。桃子にとってロリータはかけがえのないものであろうが、ロリータを「仕事」や「人生」という文脈では語らない。自分が気持ち良いと感じるままにロリータと付き合っている。だから、デザイナーになることには後ろ向きだった。良い意味で好きに“適当”なのだ。そんな彼女の生き方から、好きが美化されがちな世の中でも自分が感じるままに生きる勇気をもらえた気がする。



主人公二人もさることながら、それを取り巻く人々が超個性的!桃子の父、母、おばあちゃん、移動販売のおじさん、などなど。お気に入りのキャラクターが必ず見つかるはずです!


「幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいるの」「おめーがつくんなきゃそれ着たい人どーすんだよ、ジャスコで買うしかねえじゃん」素直に葛藤している二人の言葉はスッと心の中に入ってきます。いつ観ても、そうだよなあと元気を貰えます。


ロリータ衣装の深田恭子を嫌いな人がいるわけがない!!!特攻服の土屋アンナが刺さらない人なんていない!!!服の布の隅々まで魅力的で、雑多なおもちゃ箱みたいでときめきます。



下妻物語』(2004)
監督・脚本 中島哲也
原作 嶽本野ばら『下妻物語』
出演 深田恭子 土屋アンナ 宮迫博之 篠原涼子 樹木希林 阿部サダヲ、他
放送日時 10月13日(金)21:00~23:00




2006年公開『嫌われ松子の一生』。同名小説の悲劇的な物語を喜劇ミュージカル調で映画化し、海外でも高い評価を受けている本作。改めて、今もう一度見てほしい理由とは。
※本文中に本編の展開や結末に触れている箇所がございます。


 この作品の軸となるテーマは「愛」だ。それも、特別にエゴイスティックな愛。「愛すること」と「愛されること」は表裏一体で、決して切り離すことはできないが、「嫌われ松子の一生」は、まさにその二つの愛の狭間における一人の女性の葛藤を描いた物語である。その様子を目撃した我々は、彼女の正直で剥き出しの愛に圧倒されながらも、どこか他人事とは思えず向き合ってしまうのだ。


 松子は、父親の愛を感じられないまま大人になった。松子の父親は、生まれつき体の弱い妹のことばかりを可愛がり、松子に関心を寄せなかったのだ。このことが彼女の承認欲求をこじらせた。大人になった彼女は愛を渇望し、あらゆる男と生活を共にすることになる。自分の身が危険に晒されようとも、どれほど暴力を振るわれようとも、松子は男たちに愛を与え続けた。それは、すべて「愛されるための愛」であった。しかし、どの男も最後には松子の元を去っていく。その度に松子の承認欲求は深く傷つき、絶望の底へと落ちていく。それでも、彼女の心はまた別の愛を探し始めてしまう。


 彼女が求める愛は、「唯一の愛」だ。単なる愛ではない。父親が自分に向けてくれなかった愛。親が子に抱く愛。それを欲していたのだ。しかし、それは他人に求めるにはあまりにも大きすぎる。にもかかわらず、唯一の愛を経験したことがない松子は、それがどれほど尊く、難しいものであるかを知らないが故に、当たり前のように他人にそれを期待し、別れの度に「なんで」と理解できずにいる。親友との付き合いもアイドルの応援も途中で辞めてしまう。それも、親友には夫が、アイドルには自分以外の沢山のファンがいたからだろう。唯一でなければダメなのだ。


 ある夜、部屋で横になっていた松子は妹の幻覚を見る。その妹の髪はぼさぼさに伸びている。昔、美容師として働いていた松子は、「ヒドイ髪形」と呟くと、はさみでその髪を切り始める。髪を切り終え、嬉しそうに微笑む妹を見て、松子は何とも言えない満足感を覚え、復職を決心する。
 松子は幻覚の中で今までとは別の愛に気づいたのではないかと思う。それは、“ただ、愛する”という気持ち。まさに、松子が求めた唯一の愛だ。今まで自分が愛されるためにしか人を愛せなかった松子にとって、ただ髪を切ってあげたことに妹が幸せそうにしていて自分の心も満たされる、そんな経験は今までとは違う愛の形を見つけるきっかけになったはずだ。
 松子の辿り着いた境地は、「無償の愛」だ。それは、見返りを求めず、自分ではなく誰かのために何かをするという愛の形。しかし、それは現代の風潮とは真逆にあるとも言える。搾取という言葉が世に定着して以来、人と人との関係には今まで以上に対等性が求められるようになった。そして、「無償の愛」と「自己犠牲」が同様の文脈で語られることも多くなった。多様化の時代、愛の形には様々な捉え方があり、一つの愛の形を信じることはとても難しいだろう。これは無償の愛なのか…それでは対等ではないのか…この気持ちは搾取とは違うと思うのだが…と自分の愛を疑い、迷ってしまう。しかし、そんな時、松子の姿を思い出す。彼女は最後まで自分の愛を信じていた。そして、最後に階段を登っていく彼女の表情はとても晴れやかに見えた。愛の基準は自分の中にあったのだ、と答えのない迷いの中でも、胸の奥のつかえがとれ、少しだけ楽になれる気がする。



全編通して多数の楽曲が登場しますが、本作用の楽曲から既成曲まで、非常に印象的で各シーンにぴったりな曲ばかり!普段、映画やドラマではなかなか見ることができないアーティストの方々もキャストとして登場しているんです。


これぞ中島監督節と言わんばかりのポップな演出が各所にちりばめられており、最初から最後までテンポよく楽しめます。しかも、その軽快さが松子の悲劇的な転落人生を際立たせる演出にもなっていて、楽しいのにツライという何とも不思議な感覚に陥ります…


中島監督のポップな演出と原作のシリアスな雰囲気を演じ分けた中谷美紀には脱帽しました…コミカルな表情、人生に絶望する演技、可愛いダンスと歌、これらを一つの作品でやりきっているんですから、圧巻ですよね。そして、他のキャストもかなり豪華!豪華俳優陣は勿論のこと、あまり普段は映画に出演しない芸人やモデル、ミュージシャンなどが多数登場します。あ!この人も出てるんだ!と見つけてもらうのも楽しいかもしれません。



嫌われ松子の一生』(2006)
監督・脚本 中島哲也
原作 山田宗樹『嫌われ松子の一生』
出演 中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 香川照之 市川実日子 黒沢あすか 柄本明、他
放送日時 10月20日(金)21:00~23:30





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